停戦協定 ページ22
・
「全く、あの子も随分お転婆に育ったものだ」
手に握る端末には全く動かない赤い点と徐々に移動する青い点が映し出されている。
「まさか、態と敵に捕まるような荒業をするなんて」
何処で育て方を間違えたのだろうかと、頭を捻るも元々よくわからない子供だったのだと思考をやめる。
まあ、そのお陰でこの戦況を大きく傾けることができたのだが。
“貴方はいつまで奈津を縛り続けるつもりですか”
先の停戦協定の申し入れの際、太宰君に云われた言葉だ。
彼の言い分はこうだ。
「彼女はそちら側にあるべき存在ではない」
確かに、昔の彼女であればそうだったと云えただろう。
だが今の彼女は、壊れたあの子は此方に相応しい人材となった。
それに私が実の娘のように、手塩に掛け育ててきた大事な子をみすみす手放すわけがない。
らしくも無く、情を掛けた子。
私が自然と目を掛けざる得なかった。
人を引き寄せ、魅せる。
不思議な力を持つ子だ。
それに彼女は私の友の忘れ形見でもある。
“娘の事を頼んだよ、先生”
彼らは彼らの筋を通し、私もそれに従った。
その事について何の後悔も無い。
「兵は?」
「ご指示通り配備しております。首領――」
淡々と紡ぐ部下の言葉に耳を傾ける。
広津さんはマフィアの中でも古株だからねえ。
歴史を見てきた人だ。
思う事がない訳でもないだろう。
「私の選択は凡て論理的最適解だ。後悔などない」
脳裏に幼き頃の奈津の笑顔が過ぎる。
私も随分毒されたものだ。
“鬼は他者の裡にも鬼を見る”
「・・・広津さん。前線への通信機を頼む」
「既に此方に」
「探偵社にはああ云ったが、完全な同盟を結ぶ論理解は存在する――」
奈津はこの結末を望んでいるのだろう。
偶には可愛い娘の我儘に付き合おうじゃないか。
「嘗て敵異能組織を一夜で滅ぼし、「双黒」と呼ばれた黒社会最悪の二人組・・・一夜限りの復活だ」
(奈津の頼みじゃなきゃ、こんな仕事二度と御免だ)
(それはこっちの台詞だよ)
570人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
汐里(プロフ) - Re-VI@TANさん» コメントありがとうございます!すいません、完全にミスですね。恥ずかしい。後程修正致します!作品を気に入って頂けて光栄です!一度陥ると中々抜け出せないのが難儀ですよね…応援有難う御座います!頑張ります! (2018年4月8日 9時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
Re-VI@TAN(プロフ) - ブランクではなくスランプ、では?私もよくスランプに陥りますねwでもそれは真剣に考えて作ってるからそこだと思います!先日この作品を見つけ、とても面白くて1日の半分ほどかけて読み続けてました。これからも頑張ってください!長々と失礼しましたorz (2018年4月8日 1時) (レス) id: 1436669b3d (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - 八重桜 蜂さん» 八重桜様、コメントありがとうございます!そう言って頂けて凄く嬉しいです!またぼちぼち更新していくので、楽しんで頂ければと思います。それでは失礼いたします! (2018年2月27日 23時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
八重桜 蜂(プロフ) - 続編とても楽しみにしてましたー!!1のときからずっと見てて、素晴らしい作品だと感心してました()応援してます!!! (2018年2月27日 23時) (レス) id: de911b9147 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:汐里 | 作成日時:2018年2月27日 22時