42 ページ6
･
翌朝。
西畑くんからの返信に驚きながらも、
仕事に行く準備をする。
昨日は日曜日、今日は出勤日で、明日は祝日でお休みだ。
そういえば、固定休がないって言ってたなーなんて考えながら、私は今日も出勤した。
仕事を終えて、帰宅。
いつもなら、今日が謙杜との呑みの日、のはず。
でも今日は、謙杜からの連絡は無い。
それが、思っていた以上にショックだったようで、
私は全然進まない時計をチラチラと見ながら、
いつものルーティンを済ませていった。
ピンポーン
肩がびくっと震える。
時計は21時30分くらいを指す。
待ち望んでいた、インターホンが鳴った。
この間みたいに、合言葉なんて聞く余裕とか全然なくて、
妙に緊張しながら、私はディスプレイの通話ボタンを押す。
『はい…』
謙｢あ、えと、Aちゃんかわいーー……｣
聞いてもいないこの間の合言葉(？)を彼は口にした。
その様子が、やっぱりいつもと違っていて、
ああ、私たち仲違いしてるんだなって感じさせた。
『、はーい』
私は解錠のボタンを押し、彼が画面から居なくなるまでディスプレイを見続けてしまっていた。
謝らないと。
謙杜だって大切なんだよって。
玄関ドア横のインターホンが鳴る。
緊張する胸を押さえつけながら、私は玄関のドアを開けた。
そこには、ほぼ1ヶ月ぶりの謙杜。
ひどく懐かしく感じるのは、きっと
この1ヶ月が、短いようでとっても長かったから。
先月よりも、少し髪が伸びて、変に大人っぽく見える。
……謝らないと。
『ごめ』
謙｢ごめん｣
先を越されてしまう。
謙杜に謝る理由なんて無いはずなのに。
彼は立て続けに口を開いた。
謙｢俺が子供で、困らせて、ごめん。
やっぱ俺、Aがおらんのとか考えられんかってん｣
真っ直ぐに私を捉える彼は真剣で、
こんな時なのに、その顔が、言葉が、とても嬉しかった。
『私も。ううん、私の方こそ、だよ』
ごめんなさい、と謝った私に、
彼はじゃあ、と切り出した。
謙｢この間の、やり直し、せえへん？｣
『！』
彼は後ろ手に隠し持っていた、
お酒たちをひっそりと前へ持ってきてそう言う。
『もちろんだよ！むしろさせて…？』
そう言って。
どうぞ、と中へ彼を誘う。
ふいにあのキスが、頭をよぎる。
ドキ、と大きく胸が鳴る。
けれど私はそれを振り消して、
彼との飲み会を、始めたーー。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 493人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SOLa | 作成日時：2023年4月16日 9時
