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私はその日お休みだったが、
大吾くんはお昼からお仕事だったらしく。
早めの昼食を、2人でいただいて。
帰りは、彼が送ってくれることになった。
大丈夫ですと断っても、密かに過保護な彼は許してくれなくて。
もし具合悪なったらどうすんねん、二日酔いやろ？
と言われてしまえば弱る私はお言葉に甘えることにした。
もはや乗りなれた彼の車の助手席。
ここに座るのも最後、と思えば寂しくもなる。
彼に運転しても大丈夫なのかと聞けば、
俺昨日飲んでないし、
と言われてより一層申し訳なくなった。
私だけが浮かれて飲みまくったってことらしい。
……恥ずかしい。
そんなことを思ったのもつかの間、
いつの間にか私の思考は、今までの彼との出来事に変わっていた。
最後、だからなのだろうか。
隣でハンドルを握る彼が、眩しくさえ見えて。
これからはアイドルとしての彼しか見れないんだなぁなんて考えてしまう。
そんな思考を振り払い、前を向く。
いつの間にか、私のマンション下に到着。
私はいつもの様にありがとうございました、と言って
シートベルトを外し、ドアに手をかける。
大｢なぁ｣
『…はい？』
大｢……ほんまに、なんもなかったって思ってるん？｣
『……え？』
大｢ほんまに、昨夜、なんもなかったって思ってるん？｣
『…なに、言って……』
彼に呼び止められ振り返ると、
真剣な瞳に捉えられる。
そして、その言葉は、私を問い詰めるようで。
なにもなかった、と言った彼。
私になにもなかったと思っているのか、と問う彼。
2人の彼が私の中でせめぎ合う。
大｢……また、いつでもおいで？｣
すっと何かを差し出された手に、
反射で当然のごとく手を伸ばす私。
ちゃり…と渡されたそれは、鍵。
きっと、彼の家のーーーー。
だめだ。
こんなの、受け取れない。
だって私は、今夜、違う人と付き合うんだからーーー。
『これっ！』
大｢絶対。必要になると思うから｣
私の言葉は彼のその一言によって遮られ。
大｢ほら、はよ降りな俺がお仕事遅れてまうやろ｣
その言葉によって私は早く降りざるを得なくなる。
私はその鍵を強く握りしめたまま。
見送ってくれる彼を早く帰すために
いち早くエレベーターに乗り込んだ。
寂しくて名残惜しい気持ちを拭い去ってくれるのは、
だめだとも思うこの手の中の鍵。
思い出される、
引っかかる言葉。真剣な眼差し。
あれは、一体ーーーーー？
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作者名：SOLa | 作成日時：2023年4月16日 9時
