Don't let go, can't let go． 2 (ページ23)

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『どうしたの？いきなり』

私はなにもなかった、何にも気づいていないフリをして、そう口にする。

『今までこんなことなかったからびっくりしちゃった』

『あ、責めてるわけじゃなくてね？』

立て続けに話してしまうのが、
動揺している証のようで。

『なにかあったの？』

そう自分で気づいていても、
そう聞かずには居られなかった。
みっちーは、私に目線を寄せているようだけれど、
目が合うことはない。
見れば、その瞳は先程と打って変わって、
ほの暗さはあるものの、驚き、なのだろうか。
それで少し見開かれていた。

『みっちー…？』

私がそう呼べば、びくっと身体を震わせ、
彼は少し慌てたように、ごめん、と謝った。

駿｢いきなり、呼び出してごめんな

ちょっと、歩けへん…？｣

そう言った彼とようやく目が合う。
少し心配そうなその瞳が揺れて私を捉えていたーーー。

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……歩き始めて、10分ほど経過しただろうか。

彼は、私の前をゆっくりと歩いてくれている。
ついて行けるスピードなのは彼の優しさで。
でも、あれからひとことも話すことはなかった。

日が傾き、沈みかけていてるその時。
彼は海辺でその歩みを止めた。

街頭がちらほらと明かりを灯している。

ふっと振り返った彼は、今まで見たことがないくらいの真剣な顔付きで、私までぴしっと姿勢を正してしまう。

駿｢……すっごいキモいかもしれへんのやけど…

今日の昼、駅で男の人とおった、よな……？｣

『！』

言いずらそうに彼は、そう口にする。
その言葉に、私は思わず息を飲んでしまった。

たしかに、お昼頃大吾くんと一緒に駅にいたーーーー。

駿｢…………やっぱ、見間違いちゃう、よな…｣

私の反応を見てか、彼はそれが事実だとわかってしまったみたいで。
でも、男の人、というのは、大吾くんだとは気づいてないーーー？

駿｢俺っ、｣

勢いよく口を開いた彼は、そこで1度言葉を止めて。
深く息をした。
そして静かに、また口を開く。

駿｢俺、……それがめっちゃ嫌やって……｣

『え…？』

駿｢…彼氏やないから、文句言えへんのやって、思って｣

『みっちー…？』

今まで、俯いていて
合わなかった目が、合う。

彼の柔らかい髪が風に揺れたーー。

駿｢……ズルいの分かってる

けど、

Aさんが、好き…です｣

沈む直前のその夕日は、
私たちだけを照らしていたーーーー。