9 ページ12
･
運命
頭に浮かんだ言葉。
脳裏を過ったのは、高橋くん、その人。
これは、あまりにも彼に不誠実すぎる…。
『や、』
やめて、と言おうとして、喉で言葉がとまる。
身体がそれを拒否するみたいに。
謙｢…ん？｣
『…たか、はしく…』
謙｢…何？他の男の話？｣
『！』
謙｢ええって、今は……｣
『っんぅ……』
頬にあった彼の手がいつの間にか後ろへと周り、
ぐっと頭を寄せられて、何度目かも分からない口付け。
それはまた、角度を変えながらその回数を増やしていく。
この行為以外、もう、どうでも良いーーー。
そう思ってしまうほどに、
わたしの想いは重なり続ける唇によって遮られていく。
ヴーヴー、と机に置いたままだったわたしのスマホが震える。
仕事の電話かもしれないそれに、
謙杜くんは動きを止めた。
それでもわたしは動くことが出来ずに、
スマホはバイブがとまる。
彼はすれすれの距離で口を開く。
謙｢……こんな相性ええんよ？
俺ら、絶対運命やって、
やからさ、俺の彼女になってよ｣
相性が良いなんて、最初に腕の中に入った時から分かっていた。
あんなに心地よくて気持ちのいい口付けだって、運命だって感じるーもはや、そうとしか考えられないほど。
…わかるのは、きっと謙杜くんはαだってこと。
そして、わたしたちが運命…なのかもしれない、ということ。
運命。
その言葉で過ぎる、高橋くんのこと。
高橋くんのことも過ぎるのに、
謙杜くんのことも脳裏に焼き付いている。
こんなの、良くない。
分かっていても、高鳴る心臓は止められなくて。
謙｢…だめ？｣
彼は、自分の魅力をよくよく分かっている。
上目遣いでそんな言われてしまえば、頷きたくなってしまうーけれど。
頷くわけにはいかない。
だって、高橋くんへの答えも、出せていない身なのだから。
『え…っと……』
謙｢…今日は、このへんにしとこか｣
『え？』
謙｢今日はその顔でじゅーぶん、やなって｣
彼はすりっと頬を撫でていく。
彼の瞳は相も変わらず慈しむように、
前髪の隙間から光っていた。
ふ、と不敵に笑ったかと思えば、
すっと身を引く謙杜くん。
謙｢考えとってや？｣
彼はそう言うと、
にやりと笑いながら自らの唇を妙に色っぽくなぞった。
そして部屋の鍵を開け
謙｢じゃあ、また会えるの楽しみにしてますね！｣
と、いつもの可愛らしい笑みを浮かべて、部屋を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 358人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
SOLa(プロフ) - 彼岸さん» 大変お待たせしてしまい申し訳ありません！そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます♡ゆっくりにはなりますが、更新していきますのでこれからもこの作品をぜひよろしくお願いします。 (8月28日 12時) (
レス) id: e6729af356 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!(՞ .ˬ.՞)" (8月27日 7時) (レス) @page23 id: 95f36b5815 (このIDを非表示/違反報告)
SOLa(プロフ) - seiさん» そう言っていただけて有難いです！意外とお待ちいただけてるみたいでとても嬉しいです。次話更新までお待ちいただけると幸いです♡ (6月2日 20時) (レス) id: e6729af356 (このIDを非表示/違反報告)
sei(プロフ) - 気長に待ってるので、是非続きを...！笑 (6月2日 1時) (レス) @page20 id: 2880584564 (このIDを非表示/違反報告)
SOLa(プロフ) - 彩さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！励みになります♡なるべく早く戻ってきますので、次話更新までお待ちいただければ幸いです！ (6月1日 12時) (レス) id: e6729af356 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SOLa | 作成日時：2023年4月16日 1時
