Don't let go, can't let go． (ページ6)

今日:66 hit、昨日:20 hit、合計:98,784 hit

6 ページ6

･

謙｢じゃ、かんぱーい！｣

『かんぱーい！』

謙社の音頭でふたり飲み会が始まる。
この会は、謙社が20歳になってから毎月恒例となっている。
謙社とは私が3歳からの仲らしく(覚えてはない)、物心ついた時から一緒にいた。私も関西で育ったが、両親ともが東京出身で、訛らなかっただけ。謙社はずるいとかなんとか言ってた気がする。

何気ない会話が楽しいこの会。
時計は既に22時30分を指し、手は早くもお互い3缶目を空けそうになっていた。

決して強くない私は、少し酔いが周りぼんやりと謙社の顔を見ている。
少し頬が赤くなっている謙社は、前髪をかき揚げた。
その仕草に思わず無意識に言葉が出た。

『…謙社って、すっごい顔整ってるよねぇ』

謙｢は？｣

謙社は私がそんなことを言うとは思っていなかったのだろう。私も、言おう言おうと思って言った訳ではないため、あれ、なんでこんなこと言ってんだろとは思った。
でも、何故か動き出した口は止められなかったようで。

『まつ毛もめちゃ生えてるし、目もおっきくて、唇もぷっくりしてて、ほくろも魅力的ってゆーか…？』

素敵な男性に育てれてよかったなーって思うー、なんて言葉が口をついた。本心ではあったが、なんだか少し恥ずかしくなり、お酒を煽る。空になった缶を置き、その縁を眺める。

育てられてないわ！ってツッコまれるのを待ってた私は、一向に何の反応もない彼の方に、おかしいな、と目を向けた。

『え……？』

思わず声が漏れるほど、謙社はまっすぐに私を捉えていた。その視線がどこか熱く、それにつれるかのように私の顔もみるみる熱くなっていくのが分かる。

あれ、なんかちょっとまずいかも、と思った時は既に遅くて。

謙｢A…｣

呼ばれたその名前が、あまりにも熱っぽく響いたから、謙社の顔がテーブルを越えて近づいてきていたのは分かっていたのにも関わらず、私は身体が麻痺したかのように動くことが出来なかった。