Don't let go, can't let go． (ページ45)

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差し出したフォークをみて、
何してんの私、と思った時にはもう遅くて、
道枝くんは目を白黒させて、固まってしまっていた。
その姿を見て、自分がしてしまったことへの恥ずかしさがすごい勢いで襲ってくる。

『あ、えと、どうぞ…？』

引くに引けなくて、そんな言葉が口をつく。
後先考えずに行動してしまう自分が恥ずかしい。
きっと今、私は顔を真っ赤にしていることだろう。

駿｢Aさんて、誰にでもこーゆーことしてるん…？｣

『！？してる、わけないよ…？』

駿｢…それ、男勘違いするからやめとったがええよ｣

彼は真剣にそう私に言ってくれる。
ほんとに、心配してくれてるんだな、と思えたけれど、

『あ、……ご、ごめんねっ！困っちゃうよね、』

遠回しにやめてって言われてる気がして、
申し訳なくなった私は、差し出していたフォークを自らのプレートへと下げる。
楽しかった今日を、これで台無しにしてしまったかもしれない、と自己嫌悪に陥り、下を向いてしまう。

『…ほんと、ごめん』

なんで、私ってこうなんだろう、と思ってしまって、
ふたりの間に沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは道枝くんだった。

駿｢にしても、美味しいなあ、ケーキ｣

と明るい声で取り繕ったような話題を振られる。
道枝くんが、せっかく雰囲気を戻してくれようとしているのに、私がそれに乗らないのはダメだ！と自分に言い聞かせ、ぱっと目線を上げる。

『だね、ほんとにおいし……』

私の言葉は途中で止まった。

目線を上げた先の道枝くんが、頬を赤く染めていたから。