Don't let go, can't let go． (ページ5)

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そして、目覚めて今だ。
夢でも見ていたんじゃないかと思う程に、あっさりと終わった昨日が、夢じゃないと分かるのは、この、メモ…。

ー
Aちゃん
良かったら連絡して
@××××××××
和也
ー

そう、帰り際に、誰にも、謙社にもバレないようにこっそり渡されたこのメモと、密かに言われた待ってる、という言葉だけが、昨日のことを現実だと思い知らせる。

相手はアイドルだ。気軽に連絡して良い相手ではない。
謙社は幼馴染だから、何も考えてなかったけれど、大橋くんは違う。
大橋くんのことを考えると、顔が熱くなってくるのがわかる。

『(これは、引き出しの中に入れとこう…)』

私はやっぱり連絡することが出来ず、そのメモを引き出しの中に隠した。自分の目に入らないように。
そんなことするなら捨てれば良いじゃんって思うのに、何故か、それは出来なかった。

それから1ヶ月程が経ったある夜、21時頃。謙社から連絡がきた。

謙杜今どこおる?
A家だけど
謙杜行ってい?
Aうん、大丈夫だよ
謙杜お酒とおやつ買ってくな
A天才じゃん
謙杜もっと褒めたってや
Aめんどーい
謙杜ひど笑

そんなやり取りを交わしていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。ディスプレイを見ると、帽子を深く被った謙社が立っている。
私は小さく咳払いをし、通話ボタンを押した。

『合言葉は？』

謙｢…えー、Aちゃんかわいーー｣

『え、なに、すっごい棒じゃん』

謙｢今まで合言葉とかなかったやんか、入れてや｣

『はーい』

私は解錠と終了のボタンを押し、いつもの様に謙社がくるまでドアの前で待ち伏せる。玄関ドア横のインターホンを鳴らした瞬間に出てやろうと意気込んでいた時。待っていたピンポーンという音がなり終わる前にドアを開く。

謙｢わ！……またかいな｣

『へへ』

謙｢いつもいつもなにしてんねん｣

『まあまあ、どうぞ入ってくださいまし～』

謙｢うざ｣

『ひど！』

謙｢はぁ、おじゃましまーす｣

謙社はすたすたと私の部屋に上がる。

そしてテーブルの上に買ってきたお酒とおやつを並べていく。
そのほとんどが私の好きなもので、さすがよく分かってる、と感心した。

謙｢はやくこっちきいや｣

『はーい』

謙｢好きなの選んでな？乾杯しよーや｣