Don't let go, can't let go． (ページ31)

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この眩しいほどの明るさを、陰らせてしまうかもしれない。

『その、ですね、ちょっと、ケンカしちゃって…』

結局そう言って誤魔化してしまう。

和｢あー、そうなんや？
たしかに、謙杜もここ最近、1人の時ぼーっとしてること多かってん｣

みんなでおる時はそうでもないんやけど、と彼は語る。

あんなにおしゃべり大好きな謙杜が、みんなと同じ空間にいるのにぼーっとするなんてこと、想像できなくて、あの出来事がそこまでのことだったのだと知る。

和｢なら、2人で会ってるってことは内緒にしといたがええかなぁ？｣

大橋くんはそんなことを口にした。
変に話題にしてもあれやしな、と気遣ってくれているようだった。

たしかに、謙杜にこのことが伝わってしまえば、
自分じゃなくて大橋くんを選んだ、と思われてしまうかもしれない。

…私が手を繋ぎたい相手は大橋くんなのだ、と思われてしまうかもしれない。

和｢よっしゃ、秘密にしたろ｣

『え…？』

和｢俺はだーれにも言わへん。
やから、Aちゃんの好きにしたらええよ｣

私が悩んでいると、そんなことを明るく優しく言ってくれる。

和｢やからさ、今はそんな顔して考えるのやめよや？｣

暗い顔をしていたらしい私に、甘すぎる提案。
でもたしかに、いくら考えても謙杜と話をしなければ解決しない、と思った私は。

『そう、ですね』

それに乗ってしまう。
すると大橋くんはにこっと笑って、また明るく話を始めた。

大橋くんとのおしゃべりはやっぱり楽しくて、焼き鳥も美味しくって、
あんなに落ちてしまった気持ちも、すぐに持ち直して、また笑いが絶えない程になっていった。

楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。

和｢今日はほんまにありがとう｣

『いえ！私の方こそありがとうございました！
楽しかったです。』

和｢ほんま？それならよかったわ｣

帰りはタクシーに乗ることになって、あと5分ほどでここに到着することになっている。

夜風が、少し温まった身体を冷ましていく。

考えないといけないこと、全部放棄しちゃいたい、なんて思ってしまうのは私の悪いところで。