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謙｢…A｣
『なぁに、謙社』
謙｢俺な、｣
謙社が何かを言いかかった時、ふいに重力を感じ、エレベーターのドアが開いた。
？｢あれ、謙社やん！｣
謙｢あ、大橋くん…｣
和｢あー、こんにちは？｣
大橋くんと目が合い、そう挨拶される。
優しそうな表情に柔らかい、掠れた声が心地よく感じた。
『こ、こんにちは…』
怖気付いたままの私は少し言いどもってしまった。
大橋くんはそのまま少し微笑んで、視線を謙社に戻した。
和｢俺、今から謙社ん部屋行くとこやねん、謙社も戻るところやろ？｣
謙｢そうやけど、一緒乗ってきます？｣
和｢ええん？｣
謙｢ええですよ！｣
彼らはそんな会話を交わし、大橋くんはエレベーターに乗ってきた。
和｢謙社がメンバー呼び出すなんて珍しいやんなぁ。みぃんな、謙社に彼女でも出来たんちゃうかって裏で騒ぎよったんよ？｣
謙｢なーんだ、なんか裏でコソコソ言ってたんはそれやったんですね｣
和｢でも、正解なんちゃう？女の子連れとるし｣
ちら、と大橋くんに目配せされ、はっと気づく。
『(女の子＝私。私が彼女って誤解されてるってこと！？)』
謙｢Aは『あ、いや、私は幼馴染で…！』
思わず口を開いたが、謙社と言葉が被ったようだった。
私が彼女だなんて、謙社にも悪い。
というか、説明してたんじゃないの、と少し謙社を横目で睨んだ。
謙｢あ…｣
和｢幼馴染なん？へぇ、そうなんや！たしかに、謙社の彼女にしては大人っぽいなぁとは思おたわ｣
そう大橋くんはケタケタと少し幼い顔で笑った。謙社は少し、ほんの少し、表情を曇らせた様な気がするが、瞬きをしたその瞬間には、もういつもの笑みを浮かべていた。
ふ、とまたさっきと同じ様な重力を感じ、エレベーターのドアが開く。
私はいつもの癖で、開のボタンを押しながら、どうぞ、と口にした。
和｢ありがと、ええ子やなぁ｣
『…っ！』
大橋くんは軽くそう言い、頭をポンっと撫でていった。
年上耐性のない私は急激に顔が熱くなっていく。
『(今、絶対顔真っ赤だ、私…)』
赤面していること自体も恥ずかしく、俯いた。
中･高と女子校で、年上男性がいない環境で育ってきたことが仇となり、年上男性には比較的すぐ赤くなってしまうクセがあるのだ。
謙｢…何真っ赤にしてんの｣
『え…？』
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作者名：SOLa | 作成日時：2023年3月6日 23時
