Don't let go, can't let go． (ページ1)

今日:60 hit、昨日:20 hit、合計:98,778 hit

1 ページ1

･

Aもうすぐ着くけど、ほんとにするの?

たたたたっと幼馴染である謙社にメッセージを送る。

私はとあるホテルのロビーに立っていた。
なんらかの撮影で泊まることになったらしいそのホテルは、いかにも高級感が漂っており、自分の場違い感がとてもとても否めない。

今日は、謙社が私をなにわ男子のメンバーに紹介してくれるらしい。

謙【俺の幼馴染やって、紹介させて？】

『…え？』

謙【なんか、幼馴染紹介ノリが今メンバー内で流行っててな？みんな紹介してんのやけど、俺だけまだやったんよ】

そう言われた私は、年上の私にも普段頼ってくることのない謙社の頼みということもあり、承諾してしまったのだ。
年上とは言えど、たった1つだけど。

ちなみに、今更ながらに後悔している。
ちょっと頼られたんだって思い上がったのが良くなかった。

？｢なーに今更怖気付いてんねんっ！｣

『わ…！』

いきなり後ろから小突かれて驚く。
そこには長尾謙杜が立っていた。

謙｢“ほんとにするの？”ってなんやねん、するって言うたらするんやって、ほら！｣

『え、ちょっ、待って！！』

後ろからぐいぐいと押され、エレベーターへと乗り込まされた。手早く、かち、と階数を押す音が聞こえ、エレベーターが上がり始める。

謙｢観念しいや。もう逃げられへんで｣

『…わかってるよ』

謙｢もう大橋くん以外集まってんねから｣

『…うーーーー』

逃げれない、逃げたら紹介するって言ってる謙社にも迷惑がかかるから。

ふぅ、と深呼吸をする吐息が耳に入る。
この空間には謙社と私しかいないわけで、私がしていないとすれば、それをしたのは謙社なわけで。
謙社は、いつも緊張した時や不安な時に深呼吸をする。
なんで、今深呼吸しているのかは分からないが、そのクセはいつまで経っても抜けないのだな、と私は少し安心した。

謙｢…A｣

『なぁに、謙社』

謙｢俺な、｣