偶然も必然も嘘も本当も (ページ46)

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☆

確かにAは

嘘しかない、迷い込んだら抜け出せない、

こんなに人が怖い、簡単に裏切られちゃう都会なんて

ぜんっぜん嬉しくないし楽しくない

だなんて泣いていたんだ、

出会ったばかりの頃なんて

目に光のないような表情で、ちゃんと会話ができないくらいだった

迷い込んだ暗闇は、とても深くて広くて

いつか壊れてしまいそうだった

でも、今は

隣で明るく笑ってずっと眩しい太陽みたいな笑顔

囁いているわけでないのに、透き通るような綺麗なウィスパーボイス

聞いていたらいつか寝ちゃいそうなくらい心地よい声なのに

力強い歌声も出せる彼女は、きっと天才なんだ

・

慎「…すき」

生放送

アコースティックギター1本で

弾き語りをし、会場を静寂に包む

最後、涙目で歌い切った彼女は

ようやく、今までの過去を全て取っ払ったように見えた

今俺の頬に伝うこの涙はきっと

彼女の分まで流しているんだと思う

慎「もっと、もっと遠く行っちゃうじゃん」

慎「隣にいてくれたらいいのにさ…」

きっとこの生放送に出たということは

彼女は国民的に認められたということ。

レコード新人賞などの賞も取り、

今年最後を締めくくる今日

2曲も歌える場所を用意された彼女は

もう、知らない人はいないくらい有名なんだ

偶然も必然も、

偶然でなく、どれも乗り越えられるからある壁

それを乗り越えたから必然的に思えるんだ

嘘も本当も、

嘘ばかりの世界でも、本当のことを信じてくれる人はいる

ついていい嘘だってあるんだ、それが分かれば見方が変わる

歌詞通りで、むしろ嫌になりそう。笑

Aの世界観が、好きなんだ

fin.