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「え、ってことは、歌からは離れろってこと…」
社長「そう。アイドルとして売れてきた奴がわざわざ事務所をやめ、グループ脱退。
そんなんで合わせる顔もないのにどうやって音楽番組に出る気だ?」
「っ…そ、そうですけど…」
ずっと生き甲斐だった。
歌って踊れるアイドルになりたかったわけじゃない。
歌手になって、憧れだった人を追い掛けたかった。
なのに、なんで…
なんでわたしは、居場所も好きな事も好きな物も、
そして、夢まで奪われなきゃいけないの?
もう二十歳だから?いやまだ二十歳。
もう少し可能性を広げさせてくれたって良かったのに。
わたしを拾ってくれた事務所だから
文句なんて言えないけれど。
昨日、資料もらってカフェで違うこと考えて寝てしまった、あの時間
マジで無駄だったけど
これからの未来も絶対無駄でしょ。
なんでこんな辛い思いしなきゃいかんのさー!
頼れる場所なんて、もう、無いのにっ…
・
ぽつ、ぽつ、
そんな効果音が出そうなくらい
ゆっくり歩いて帰る。
今日も気づいたら真っ暗だったなあ、外。
少しまえの記憶が蘇る。
ああ、倉庫の暗闇に呼び出されて
社長に襲われかけたなあ、とか
ああ、ストーカーに遭って夜中の道端でキスされたなあ、とか。
わたしのファーストキスは気持ち悪かった。
まともな初めて、をしたことが無い。
もっと、明るくって幸せを感じられる
人に愛されながら生きる、
そんなことがしたかった…
よくある、芸能人が耐えれなくなって薬に手を出しただとか
飛び降り自○だとか
今ならわかる、その気持ち。
けど、そんな勇気ないから。
わたしって意外と小心者なんだなあ、
「もう、いっそのことこのまま誰かに殺されたい」
それくらい、この時のわたしは追い込まれていた。
・
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作者名:サトウプリン | 作成日時:2020年7月1日 0時