10.秘密 ページ10
その日、内線で受付に１本の電話が入った。
「はい、こちら１階受付カウンターです。」
櫻「あっ、美緒さん？」
あっ
「櫻井さん」
櫻「ちょっとごめんね、お願いがあるんだけど」
なんでもお受けします、って。
櫻「たぶんそこの受付に編集部宛に書類が届いてると思うんだけど、ちょっと今手が話せ無くて、悪いんだけど、編集長室に届けてくれないかな？勝手に入っちゃって構わないから！」
！！！
「はいっ、大丈夫です！」
櫻「ごめんね、じゃよろしく」
そんなこんなで、私は２度目の編集長室にいた。
デスクにそっと書類を置いて出ようとした時
「あっ、、、」
この前見れなかった写真。
私は何気なく、ふらっと覗いた。
この瞬間、私は見てはいけないものを見てしまったようだった。
「えっ、、、」
そこにはにっこりと笑う櫻井さんと、
男の子と女の子の子供2人。
「どういうこと、、？」
私はこの足りない頭をフル回転させて考えた。
「ってことはこの写真撮ったのって、、、」
櫻井さんの奥さん。
いやでも、櫻井さんは結婚してないはずじゃ、、
櫻「美緒さんごめんね、わざわざ」
！！！
「はっ、、、！いや、全然大丈夫です。」
櫻「ん？どうかした？」
すると櫻井さんは写真に目をやり、ああ、と口を開いた。
櫻「それ、うちの子なんだ。」
え、どういうこと、、、？
櫻「俺、去年離婚してさ、社内じゃあんまり知られてないけど、色々あって、この子達俺が引き取ったんだよ」
「そ、そうだったんですか、、、」
どうりで彼女もいないわけだ、、、
でもまさか子供がいるなんて、、
櫻「大丈夫？(笑)」
私が我に返ったのは、驚きのあまりすごい顔で固まっていたであろう私の顔を、櫻井さんが覗き込んだときだった。
「あっ、！ごめんなさい」
櫻「いや、そりゃそんな事突然言われてもって感じだよね(笑)ごめんね」
「いや、そんな事ないです、、」
ただ、純粋にショックだった。
自分の好きな人に前妻がいて、しかも子連れだったなんて。
これで、
私あなたの事が好きなんです
なんて軽はずみには言えなくなってしまった。
まあ、初めから言うつもりも、覚悟も、勇気もなかったけど。
私がエレベーターに乗るとき、櫻井さんはありがとう、と言いながら私の肩をぽんぽん、と叩いた。
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作者名：しんみの | 作成日時：2018年1月3日 9時
