14.雨 ページ15
「はぁ...」
和より早く帰ってお風呂から出た私は
強い雨に打たれて音を立てる窓をを見つめながら
ひとりで考えていた。
ぼーっとしてると、昼間のことが頭をよぎる。
いや、子供じゃないんだし。
誰だって泣きつかれたらハグくらいするか。
ていうか私の方からハグしに行ったんだし。
でも
抱きしめてくれるとは思っていなかった。
元々そういうことするキャラじゃないし。
あの場面なら真っ先に
こんな所でやめろって言うと思ってた。
「意外と優しいところあんじゃん...」
まあ顔だけはいいし一応モテるしね。
「ふぅーん」
独り言をブツブツ言っていた時
玄関からガチャっと音がした。
「謝るか...」
一応ね。
優しくしてくれたのに突き放しちゃったし。
一度息を整えて階段を降りた。
階段を半分ほど降りたあたりで
和と目が合った。
「おかえりー...って...」
二「ただいま」
「何その格好...」
玄関に立ち尽くしていたのは
頭から靴の先までびっしょびしょの和だった。
私が何も言わずに玄関まで行って近づくと
強いお酒の匂いが鼻をツンと抜けた。
「酒くさっ...」
二「その前にタオル」
私は慌てて洗面所へ行き
大きな真っ白のバスタオルを1枚持ってきて
和の頭にバサッとかけた。
その時
一瞬だけ触れた和の額は
すごい熱を持っていたような気がした。
びっくりして、もう一度
今度はしっかり触って確かめた。
「ねぇ、熱あるよね？」
二「... うん」
よく見ると
和の頬はいつもより少しほてっていて
目もうるおって虚ろな目をしている。
確か最近風邪気味だと言っていたような。
「今朝傘持って出なかったの？」
二「うん」
「じゃあなんで買わなかったの？」
二「いつもの居酒屋だし走れば大丈夫かなって」
いつもの居酒屋とは
和がたまに仕事帰りにひとりで立ち寄る
家から歩いて10分くらいの居酒屋のこと。
「大丈夫なわけないでしょ... 」
二「うん」
「とりあえずお風呂入りな、沸いてるから」
二「うん」
私がリビングへ行こうとした時
和は私の腕を急に掴んできた。
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作者名：しんみの | 作成日時：2018年1月3日 9時
