12.様子 -和side- ページ12
エレベーターのドアが開くと、そこには見慣れた顔がいた。
櫻「じゃ、またね」
ついでにあのイケメン編集長も。
「はい、また...」
軽く会釈をして背中をあちらに向けると、床をボーッと見つめながらこちらへ歩いてくる。
と、気づかないまま俺の横を通り過ぎた。
和「って、おい！」
俺のツッコミで初めて存在に気づいたようだが、全くもって驚く様子も無く、ゆっくりと振り向いた。
「、、、なに？」
和「なっ、なにって、、、」
幽霊みたいな顔してる。
和「あいつとなんかあった？」
俺が顎で指した相手が分かったのか、少し目をそらして、別に、と意味ありげに言った。
「世の中さ、知らない方がいいこともあるって、本当なんだね、、」
和「なんだよ急に、、」
大丈夫だから、と、骸骨みたいに弱々しい声で俺のことをしっしっと追い払った。
でも。
「ふっ、、くんっ、、、、っ」
和「えっ、、」
泣いてる？
和「おい、、、大丈夫か？」
ひと声かけると、勢いよくバッとこちらを向いた。
その目には今にも溢れそうな大粒の涙が溜まっていた。
涙と共に溢れ出す気持ちも抑えられず、
「わあぁぁんっ」
子供みたいに俺にぎゅっとしがみついた。
ったく何があったんだよ。
和「ちょっ、、見られたらまずいって」
なんて声が届くはずもなく、お構い無しに胸に顔をうずめて泣き続ける。
和「はあ、、」
仕方なく俺はゆっくりと背中に手を回し、
優しく抱きしめて、
背中をトントンっと叩いてやった。
俺が守ってやれたらな。
なんて思ったりして。
こいつが好きなのは俺じゃないのに。
まあ別に俺もあいつの事好きなわけじゃないけど。
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作者名：しんみの | 作成日時：2018年1月3日 9時
