35:決断 ページ36
天月side
満月の日が近付いてきて俺は早く決めなくちゃいけない。
誰の血を吸うか…
「私の血を吸うのどうして躊躇うの?」
「いや、だって傷付けちゃうのは気が引けるし…」
「大丈夫。直ぐに治るから」
赤い目をしたAちゃんがそう言ったのはいつだったろうか。
「Aちゃん」
皆と帰ってから、また学校に言って古い音楽室。
いつものあの曲を奏でる手が止まる。
「あ、天月さん」
ニッコリ笑う。
「俺はもう少しだけ頑張ってみる」
そう言えばAちゃんはクスクスと笑った。
「うん、そっか。頑張ってね。いくら吸血鬼の血が極薄でもずっと我慢なんて出来ないだろうからその時はいつでもいいよ」
俺くらいなら満月の日には喉が渇くけど我慢できる程度らしい。
「てかわざわざそれを言いに来たの?」
「うん。あとAちゃんのピアノを聴きたくて」
「ありがとう、嬉しい」
窓から見える月はそろそろ満月になりそうなくらい明るくて月の光で影が出来るくらいだった。
「綺麗…」
静寂に溶け込むような旋律。
透明感のある音はどこまでも届きそうで惹き付けれる。
でも変わらずその音はどこか切なげで胸が締め付けられる。
…Aちゃん、その曲は誰に聴かせてるの?
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作成日時:2017年9月27日 14時