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「欲しいのは彼女のベースだ。別に心や身体は好みじゃない。」
『…あーあ…』
「お前…もっと言い方…」
「ッ騙したのね!!?」
「何か期待してた?」
「だから言い方…!」
「…めんどくさ。そもそも僕にはもう___」
「テメェ…この野郎!!」
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帰りの電車。
例の彼女の彼氏さんが振りかぶった拳から千斗を庇った万理の頰は、見事に腫れ上がってしまっていた。
「何考えてる?」
「お前のせいで誰かに刺される前にバンド解散するか考えてる。」
「そ。バンド名考えたよ。」
「人の話聞いてたか?全く……痛ッ!」
「何?」
「コーヒーが沁みた。」
「可哀想。」
「この野郎…」
「バンド名、バンも…Aも、きっと気にいると思うよ。」
「へえ…どんなの?」
「___ " Re:vale " 。」
『リバーレ…』
千斗の言葉を繰り返す。
それが、私がこの先の人生で追いかけていく人達の名前。
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千斗は人付き合いに関してはかなり不器用で、割といい加減でだらしなかったけど…曲作りに関しては常に全身全霊で向き合って、打ち込む。
真摯な努力家だったよ。本当に曲作りに関してだけだけど。
勿論音楽を好きで、作曲をしていた万理もそれは一緒だったから…ふたりが喧嘩してるのも沢山見てきた。
ふたりが喧嘩した後の千斗の逃げ場は私の部屋だったから、ふたりが喧嘩するとすぐにわかっちゃうんだよね。
『また喧嘩?』
「だってバンが…」
…世話の焼ける子だけど、やっぱり可愛かったりする。
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作者名:緋真 | 作成日時:2023年8月19日 3時