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千斗 . side
.
一目で分かった。
彼女がバンに好意を寄せていること。
バンが、彼女を大切にしていること。
「俺、幼馴染がいるんだ。
俺と一緒で音楽好きで…千もきっと仲良くなれるよ。」
" 幼馴染 " らしいけど、その
人付き合いも感情表現も苦手な僕が言えることでもないけどさ。
.
声をかけたのは気まぐれだった。
初めて彼女に会ったのは高1の時。
バンの音楽を、本当に幸せそうに聞く彼女に目を奪われた。
音楽を心から愛する彼女に、僕の音楽を愛して欲しくなった。
『折笠、千斗くん?』
「そう。」
願わくば、一番に。…なんて。
『……良い音…』
花が咲いたような、緩やかな笑顔。
バンの曲を聴いていた時とは少し違う。
けれど、心底幸せそうなその表情にどうしようもなく胸が締め付けられた。
( …嬉しい )
彼女は、他の女の子達とはなんだか違う。
「Aー…って、え?千?」
「バン…」
「お前なんでウチの学校に…っていうか何でAと?!」
『あ、やっぱり万理が言ってた子だったんだ。』
「バンのこと待ってたら、バンの曲が聞こえてきたから。」
バンの曲を口遊んでいた彼女に見惚れて話しかけたのは、秘密。
まだ出会ったばかりのこのふたりを、僕は本当に好きになれる気がしたから。
( ……ああ、心地良い )
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作者名：緋真
| 作成日時：2023年8月19日 3時
