愛を欲すは孤独の狼-2 (ページ4)

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ごじゅうさんページ4

「え、何言ってるの、？」

声が出ない。

絞り出した声も、いつもより掠れている。

呼吸が浅い。

肺まで空気が通っていないみたいな感覚だ。

「もう隠さなくてもいい。潜入捜査官としてここへ来たんだろう？」

「ちょっと待ってよ、」

「まさか、何も知らずに来たなんて言わないよね？」

「何も知らないわよ！」

落ち着け。

整理しよう。

…だめだ。追いつかない。

ちょっと待って、どうしたらいい？

「命乞いの為に取っておくのかと思ってたけど。調べが足りなかったみたいだね。」

トンっと肩を押されてソファに仰向けになる。

こぼれ落ちたワインも気にならないくらい私の頭の中は混乱している。

そこに覆いかぶさり、額に拳銃を突き付けてきた。

「まだ分からない？君は、」

「俺の妹なんだよ。双子のね。」

口元に弧を描く彼とは逆に、目を大きく開く私。

そんな…そんなこと、ある？

「何度も言っただろう？」

『やはりその頭は伊達じゃないな。』

『僕は君が怖いよ。』

『そこまでの頭脳を持たれると僕が負けてしまうからさ。』

『ここにはよく来るよ。大切な人とね。』

『…運命だ。』

「っ、！」

思わず息を呑んだ。

じゃあ、彼は最初から私の事を知っていて…。

「どうしてそんな辛そうな顔するの？やっと君の欲しがっていた家族と会えたのに。」

「……だ、」

「なぁに？」

「最悪だよ…。」

「大丈夫。今からでも歓迎するよ？優等生の君を」

「うるさい！！！」

怒鳴り声と共に睨み付ける。

互いに素性がわかりきってる今、阿久津凪桜として潜入する意味も理由もなくなった。

それなら椎名千輝として今ここでコイツを捕まえる。

「…うるさいのはどっち？やっぱり君は出来損ないの大馬鹿者だね。今置かれている状況が分からないの？」

一層強く銃口が額に当たる。

「わかってる。」

完全に不利な状態からのスタート。

しかも、下手したらそのままThe・END

相手と同調しろ。

隙を伺え。

吸って、吐いて、吸って、吐いて

部屋が一瞬白くなった。

「ふっ！」

手刀で拳銃を飛ばし、地を蠢くような音と共に奴の腹へ蹴りを入れる。

「ぐはっ…」

見事に反対側へ倒れ、ソファから落ちた。

いける。