愛を欲すは孤独の狼-2

ごじゅうに ページ3

「父さんは純血の日本人だけど母さんはハーフ。」

「じゃあケイトはクウォーター？」

「そ。」


まぁ、単純に考えてそうなるのか。


「ねぇ、どうして国籍を変えてまでして家族で移住したの？やっぱり、お母様がハーフだから？」

「んー、移住の時にアメリカを選んだのはそれが大きいんじゃないかな。」

「てことは、候補は他の国もあったんだ？」

「らしいよ。…でも実際、その辺りの出来事は俺が生まれてそんなに経たない頃の話だから俺もあんまり知らないんだ。」


そんなに急ぎの用だったのか？

傍また別の目的が？

何にせよ端から移住を決めていた事は確かな様だ。


「移住の理由も？」

「Memoriesの本拠地をここにしたいから。って言ってたのは聞いたよ。」


じゃあMemoriesの次期ボスとなる人材を作るためにケイトは作られた訳だ。

それなら両親共に健康なのに体外受精をした理由にも納得がいく。


「あ、ねぇ。日本の国籍だったってことは、日本人としての名前とかもあるの？」

「それは母さんだけかな。」

「ケイトとお父様は？」

「俺と父さんはそのままだよ。クロスは色の黒に必須の須。父さんのジョージは譲渡の譲に漢数字の二。ケイトは慶喜の慶にかけるの翔。」


黒須譲二と黒須慶翔。


「すごい、普通の日本人だ…！」

「でしょ？」


そのまま何の捻りもないのに全然気が付かなかった。

カタカナで書いても違和感が無い名前ってヤツか。


「じゃあお母様は？」

「改名した後は倉の内側にカタカナでカレン。」

「改名の前は？」

「あ、そうだ。凪桜、俺のミドル覚えてるかい？」

「えっと、Sだよね？」

「それはお婆ちゃんの苗字から取ったんだ。」

「へぇ。ミドルって名前の頭文字とかだと思ってたけど、苗字からも取れるんだ。」


初知り。

知識が増えた。今後使うか微妙だけども。


「うん。で、そのSはね、」


スっと滑るような手つきで私の頬を撫でたケイト。


そのまま顔が近付いて、残り数ミリのところで止まる。


まるで、初めて会ったあの時みたいだ。



そして、彼の目が私を捉えて言った。





「…椎名だよ。千輝。」




その言葉の3秒後



ヒュッと浅く息を吸うと共に




背筋が凍りついた。

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