けんか ページ15
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「だるちゃんのばか!もうしんない!!!」
そう言って私は雨の中傘も持たずに出ていった。
「あっこらA!」
だるちゃんの呼び止める声も聞かずに。
きっかけは多分些細なことだった。ただ私が仕事から帰ってくるのが遅かっただけ。珍しく連絡の1つもしなかっただけ。
………まぁ全面的に私がわるい、かな。
だるちゃんは心配してくれただけなのにそれに対して反抗して家から出ていくなんて子供じみたことして。そんな自分に嫌気がさす。
家から出たものの財布も無けりゃスマホもない、なんて終わった状況。公園のベンチに座ってザーザー降る雨に打たれてるなんてほんとに惨めでなんだかなみだが溢れてくる。
優しいだるちゃんに八つ当たりして、ほんとに最悪なやつ。こんなの振られても文句言えないな。と自嘲した。
「ほんと、ばっかみたい。」
「ほんまにな。」
独り言のつもりだった。けど後ろから聞こえるはずのない声がそれに応えて。まさか、でも、きてくれるはずないのに。そう思って後ろを振り向くと傘を指しているのにずぶ濡れなだるちゃんが。
「な、んで………ここ、」
「Aの行きそうなとことか簡単にわかるわ。あーもーほら、そんな体冷やして、風邪ひくで?」
八つ当たりして勝手に飛び出した。どうしてそんな私に優しくするの。頭がこんがらがって何もわかんなくなって、気づいたらそんな疑問を言葉にしていた。
「なんで、そんなに優しいの」
「ん〜?Aのことが好きやから?
ほーら、帰るで。帰ったらお風呂入ろな〜。」
全身びしょ濡れでさっきから少し震えているのにいつも通り笑う彼に嬉しさも罪悪感もあって。
申し訳なく思いながらも彼のことをきゅ、と抱きしめるのだった。
たくさんのごめんねとありがとうとそれから大好きを
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作者名:翡翠 | 作成日時:2021年11月26日 1時