雨の日 ページ10
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朝は降ってなかったから、と油断して持って来なかった傘。お店の中から見てたけど帰りまで結局止むことは無かった。あーあ、今日は濡れて帰るかコンビニで傘買うかだな〜と思って帰ろうとする仕事終わり。
ふとお店の前に見えた見覚えのある人影にもしかしたらと思って外に出る。……やっぱり、
「だ〜るちゃん!外でてるの珍しいね、もしかして迎えに来てくれたの?」
そこに居たのはだるちゃんだった。
「ん、A今日傘もっていかやんかったから困ってるかなって。一緒に帰ろーや」
「ん〜ふふ、大好き〜。」
そういってだるちゃんの細い体に抱きつく。私の彼氏様は優しくてかっこいい。
「晩御飯の買い物したいからスーパー寄ってもいい?」
「ん、どこのスーパー行くん?」
「あ〜でも今日はあっちのスーパーにしよっかな」
「了解。」
そうして暫く話しながら歩いていると自分の身体が一切濡れてないことに気づく。いくら男と女でもこの1人用の傘なら濡れてもおかしいはずなのになんでだろう。そうやって考えてたら急に黙ったことを不思議に思っただるちゃんに心配されて。
「A急に黙ったけどどした?なんかあった?」
なんにもないよ、
そう答えようとしてだるちゃんの方をみるといつもの赤いパーカーの肩は濡れてて。
「もーちょっと傘そっちずらして、」
「ん?なんでぇ?」
「だるちゃん肩濡れてるでしょ!びちょびちょだし風邪ひくよ?」
「あ〜なに、そんなこと。もおこら、傘おさやんで。別におれはいいから。」
「だめじゃん。だるちゃん濡れるしやだよ。」
「やから別にええってぇ。
俺基本的に風邪ひかやんタイプやし、まぁいうて?
相合傘って濡れてる方が惚れてる方って言うやん?」
「…………だるちゃんのばか」
きっとそう言う私の顔は真っ赤で。でもだるちゃんも照れたのかすぐに前を向いて。
全身びちょ濡れになっても足りないくらい、私も彼に惚れてるのに。
そう思いながらだるちゃんにかくれてそっと手のひらを傘の外に出すのだった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2021年11月26日 1時