好き、嫌い、好き Ⅲ (ページ5)

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“え？”

って亀井さんが、呟くように、そして私に答えを求めるように聞いてきた。

『7年間、付き合った彼氏がいました』

“ああ、あの人ね”と言わんばかりに、

亀井さんは頷いた。

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『あの人にとって私は、特別じゃなかったかもしれない』

一番に守りたい人じゃなかったかもしれない。
生涯共にしたい人じゃなかったかもしれない。

『でも私は、プロポーズされた時にこの人しかいないと思いましたし』

『生涯、人をこんなに好きになることもないと思いました。』

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でも呆気なかった。

さよならなんてあっという間だった。

気にしてないつもりだった。

ひとりでも大丈夫だと。

でも、私はずっとずっと弱かった。

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もし勇人に恋をしたら。

そう思った時に、頭に浮かんだのは

恋愛のワクワクとかキュンキュンじゃない。

“怖い”

ただ、それだけだった。

だから、好きじゃないと言い聞かせた。

私が彼を好きになっても、いいことなんて１つもない。

違う違う。

こんな感情知らない。

こんな感情は、好きじゃない。

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亀井さんが車を止めた。

到着したらしい。

亀井さんはハンドルを握りしめたまま、視線を落とした。

『行きましょうか』

降りようと扉に手をかける。

亀「待って。」

顔を私に向け、言葉を続けた。

亀「言葉にしたら、なんか変わるかもしれん」

“勇人も、Aちゃんも”

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『もし私が、勇人のことを好きだったら、の話ですよね？』

“ありがとうございました”

車を降りるとき、

亀井さんは難しい顔をしていたかもしれない。

でも、微かに白い歯が見えた気がした。

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