好き、嫌い、好き Ⅲ (ページ37)

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最後まで迷った。

いくら、球団の方に取材のお礼だとチケットをもらったからと言って、

あんなことをしてしまった彼に合わせる顔がなかった。

でも、あの人の姿を近くで見たいと思ってしまった。

バレない様に、びくびくしながら試合を観戦した。

私に彼の活躍を見せてくれるためにあったんじゃないか、と思うぐらい

彼が活躍してくれた試合だった。

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誰にも会わずに帰るつもりだったけれど、球団の方に呼び止められ

彼にインタビューがあるという事も分かって

少しだけ、ほんの少しだけロッカーへと出向き、皆さんに別れを告げた。

ひとりで歩く廊下は、懐かしくて、寂しかった。

彼と話したこと

彼と笑ったこと

彼に怒ったこと

彼を、好きになったこと

気づいたら私の中で、彼は欠かせない存在になっていた。

やっぱり、忘れられない。忘れたくない。

諦められない。

彼に会いたい。彼の声を聴きたい。

『っ‥‥、』

右から、左から溢れてくる涙に目を押さえる。

忘れられなくてもいい。

彼は彼で、私は私で

『応援できるだけ幸せで‥‥‥』

できっこない。

私は、それ以上の幸せを知ってしまった。

『っ、勇人‥‥』

恋しい

その思いだけで、彼の名を呼んだ。

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