好き、嫌い、好き Ⅲ (ページ24)

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強い風が、髪を梳かした。

ここに来るようになって数ヵ月が過ぎた。
最初は戸惑っていたわたしも、今では一人で取材ができるまでになって

やっぱり、寂しい。

外から見渡すドームは大きかった。
再び吹いた風に、髪を押さえる。

きっと、前までの私なら

終わるのが怖いから、始めるのも躊躇ってたと思う。
でも、大きな世界を知って、小さな世界に縮こまるのは勿体ないと感じた。

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『亀井さん、おはようございます』

ドームの中へと続く通路で、亀井さんの後ろ姿を見つけて声をかける。

亀「おー、Aちゃん、おはよ。取材ー？」

『はい、あとラスト2回ですよ』

そっかぁ、とどことなく残念そうに亀井さんは力なく笑った。

亀「ほんまに球場で、Aちゃんに会えんようになるんやなぁ」

『淋しいですね‥‥』

ああ、だめ
いつもしおらしくなってしまう。

決めたんだ。
最後まで、笑顔で、私は私で居ると。

『また、お食事誘ってください』

亀「もちろん」

満点の笑顔で返してくれた亀井さんとお別れする。
そして、しばらく歩いて見つけた彼に、声をかける。

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『おはよう』

彼はちらっと私を見て、低い声で“おはよ”と挨拶をした。

あれ、機嫌悪い？

『大丈夫、体調悪いの？』

「別に、」

いつもにも増してぶっきらぼうで、速歩き
(そりゃ、いつも冷たいけど)
どんどん置いていかれていっちゃう。

『あ、そう言えばね、健ちゃんのお店、うちの雑誌で取り上げることになったの。今人気みたいで、』

急に足を止めた彼が、振り返る。

「暇じゃないから、ついてこんといて」

それだけ告げてくるっと体を戻した勇人は、部屋の中へ姿を消した。

怒ってるとか、機嫌が悪いとかじゃない。

私、避けられてる。

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