好き、嫌い、好き Ⅲ (ページ11)

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「ちょっと待っててもらえますか、」

Aを担ぎ、運転手さんに声をかける。

軽、って思いながら

ああそういえば

あの時、Aとすれ違って

いい匂いやな、って思ったの忘れてた。

「A、おい、着いたぞ」

『んー‥‥、鍵、』

目閉じたまま、覚束無い手で鞄のなかを探るから

「貸してみ、」

痺れを切らしてAから鞄を奪う。

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ガサゴソ、ガサゴソ

鞄のありとあらゆる所を探しても見つからない。

「はあー、どこあんねん、」

元々荷物のあまり入っていなかった鞄に、

鍵らしいものは見当たらない。

「なあ、鍵持っとらん？」

そうAに訊ねたときだった、携帯が鳴ったのは。

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「もしもし、亀さん？」

亀「もしもし、勇人ー、ごめん」

車に乗っているのか、声が聞こえにくかったが、俺に謝ってることはわかった。

「どしたんすか？」

亀「Aちゃんの家の鍵、だと思うんやけど、俺の車に落ちてた」

その言葉に納得する。

「マジすか‥、」

亀「すまん。今気付いた、」

亀さんいわく、もう少しで家についてしまうらしい。

今から取りに行くって言っても、亀さんに迷惑やし。

ああ、もう。

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亀「勇人？」

「、大丈夫です。わざわざすいません、」

亀「あー、うん。どうすんの？」

「どうするって、近くの空いてるホテル探しますよ」

亀さんは少し考えたあと、衝撃の言葉を口にした。

亀「勇人の家泊めたらええやん？」

「はっ？何言って、」

亀「うん。それがええわ、じゃ」

半ば一方的に切られ、途方にくれてしまう。

途端に、疲れが来た。

どうしろ言うねん。

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