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戸惑いはなかった。
彼女のベッドサイドに腰かけた。
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「彩登美っていう子やった。同い年の、俺にはもったいない美人だった。」
一呼吸挟む。
「‥出会ったのは、球団のスタッフさんの紹介。今年から、球団職員になるからよろしくって飲み会で。‥‥正直、最初に会った時は綺麗な人やなくらいしか思わんかった。」
“坂本勇人くん。よろしくね”
あの日触れた彼女の手は、優しかった。
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「告ったんは俺。彩登美が、球団職員として仕事が一番楽しい時期やったと思う。‥‥最初は、断られた。こんな関係は長くは続かん、って言われたけど、諦められんかった」
“勇人くん”って、あの声で呼んでほしくて
もっと近づきたくて、触れたくて。
彼女が一番ほしくて
好きで、大好きで。
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「その言葉を、俺が信じとけばよかった。」
「別れを告げたのは、彩登美だったけど原因も責任も俺にある。」
“勇人くん、無理なんだよ”って。
「憧れのままやった。彼女、っていう存在より、理想やった。‥‥きっと、彩登美は気づいたから、それに。」
“勇人くんはわかってないんだよ”
涙した彼女に、何て言葉をかけたらよかった？
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俺じゃ君を守れんと思った。
君じゃ俺を支えれんと思った。
「無意識のうちに、俺は男には強さが必要で、女には優しさが必要やと思ってた。」
そんなん、全然違うのに。
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「別れたあとに、俺と付き合ってたことが張れた彩登美は、どこかの球団の裏方に回されたらしい。それ以来、会ってへんから今でもこの仕事を続けとるかどうかもわからん」
ごめんじゃ足りない。
ありがとうじゃ違う。
俺はもっともっと
深くて鋭利な刃物で、
彼女を傷つけた。
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作者名：理彩 | 作成日時：2018年8月2日 22時
