好き、嫌い、好き Ⅱ (ページ41)

今日:9 hit、昨日:17 hit、合計:308,243 hit

25-6 ページ41

.

一応、扉を数回ノックする。
返事はない。

視線をお盆の上に乗るお粥にうつす。

お粥を作ってある程度わちゃわちゃした亀さんと慎吾は、ちゃっかり、さっき帰ったばかり。

「どうしろ言うねん‥」

この扉を開けて、もしAの目が覚めんかったら

俺も帰ろう。

.

ゆっくり扉を開ける。

目はつむっている。

期待していたことのような、がっかりしたことのような。

ーカチャン

サイドテーブルにお粥を置く。

少しだけたった音に、視線をずらす。
Aの瞼がピクッと動いて、目が開いた。

.

『‥はや、と‥‥』

「悪い、起こした」

『‥‥ん、』

「顔色さっきより良くなった。お粥ここ置いとくから、食べ」

『ありがと、』

「おう。そんなら、俺もそろそろ帰るから」

携帯と家の鍵がポケットにあることを確認して

立ち上がる。

.

『、待って‥‥』

力無い声が聞こえて、足を止める。

聞こえない振りをして、帰ることなんか簡単やった。

それでも、足は止まった。
止まってしまった。

.

『‥勇人の、忘れられない人の事、教えてっ‥‥』

.

それが、

どれだけリスキーだったとしても。

.