24-3 ページ33
.
『こんばんは』
開いた窓から、小さく挨拶をする。
「早よ乗り、」
助手席をすすめてきた彼だけど
流石に遠慮して後部座席の扉を開ける。
何か言いたげに、彼は振り返った。
.
「隣でええよ、別に」
『責任とれないもん、私じゃ』
防げる事は防がないとね。
「ふーん」
体を正面に向け直した勇人は、ミラー越しに私を見た。
「シートベルトつけた？」
『うん』
「出発しまーす」
.
いい車だからかな。
乗り心地がすごく良くて、眠たくなっちゃう。
あの時から、
勇人の匂いは落ち着く。
.
「仕事忙しいん？」
『最近みんなに聞かれる、』
「疲れた顔しとるからやろ」
『えっ、ほんとに？』
笑ったらくしゃってなるとこも、
運転してる姿も、
全部
見とれてしまう。
.
「大変やなあ、」
『でも今楽しいよ、この仕事出来て本当に良かったなって感じてる』
『記事を読んでくれた女の子たちが感想くれてね、“参考になりました”とか、“もっと読みたい”って。凄い評判いいの。』
「俺も時々聞く」
少しだけ、笑顔を見せた貴方に聞いてもいいのかな。
それとも、あれは避けないといけないこと？
.
「ついたで」
扉を開けて
『っ、』
磯の香りがした。
暗くて良く見えなかったけど、
『‥‥海だっ、』
「8時からライトアップあるらしいよ。ご飯食べたら見に行くか？」
『うんっ』
こっち、って
さりげなく引いた手が
ちょっとだけ、熱くなりそうだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 646人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：理彩 | 作成日時：2018年8月2日 22時
