好き、嫌い、好き Ⅱ (ページ22)

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“お疲れ様です”と、部屋に入ってきた彼女は、今日は髪をくくっていた。

取材のトップバッターは俺らしい。

「なんか変な感じするわ」

『変な感じって？』

取材の準備を進めるAを座って眺めていた。

「Aと仕事するの、」

資料をめくりながら、少しだけ微笑んだように見えた。

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『確かに。凄い奇跡だよね』

あの日。
あの場所で。

会うことがなければ、今こういう風に思うこともなかった。

Aが恋人とうまくいっていたら、

この仕事を引き受けなかったら、

俺たちは一生交じり合うことのない

赤の他人だった。

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梶「A、準備できた？」

かっちりスーツで梶原さんが顔をのぞかせた。

『はい、バッチリです』

梶「じゃあ、始めましょうか。坂本さん、本日はよろしくお願いします」

握手を交わして、テーブルを挟んで正面と斜め左に二人が座る。

梶「この子、仕事になったら性格豹変するので気を付けてくださいね？」

正面に座った梶原さんが、にやりと笑った。

『部長、豹変なんて大袈裟ですよ』

梶「あら？本当のことじゃない」

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取材を進めて、さっきの梶原さんが言ったことは間違いじゃないと思った。

良い意味で、Aは豹変する。

良く出来る、部下なんやろうなと思った。

何故か、

取材を終えたときに見せたAの笑顔が

頭にこびりついた。

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