好き、嫌い、好き Ⅱ (ページ45)

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健「なあ、聞いてんの」

ぐっ、と視界に入ってきた健ちゃんは、

機嫌悪そうに眉間にシワを寄せていた。

健「久しぶりに来たと思ったら、ボケッとした顔しやがって」

『ん‥、ごめん』

誤魔化すように出されたお酒を飲む。

彼は小さく首を振って、私に背を向けて、お酒のボトルの確認を始めた。

開店したばかりで、店内には私以外にお客さんはいない。

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『今日、卓巳さんは？』

健「デート」

『あぁ、そっか‥』

直ぐ別れるんじゃないか、って心配してたけど

思っていた以上にいちゃこらしてるらしい。

健「‥何があったんだよ、」

ぶっきらぼうに健ちゃんは言った。

え、って私が尋ねると

少しだけ顔を横に向けた健ちゃんは、苦い顔をしていた。

健「何年一緒にいると思ってんだよ。人の話聞くのも、バーテンダーの仕事なんだよ」

口は悪いけど、昔から、心配してくれることは変わらない。

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『健ちゃんさ、今好きな人居ないの？』

振り向いた健ちゃんの顔が、“はあ？”って、言いたがってるのが直ぐ分かる。

健「何、」

『真面目に聞いてる、結構』

健「‥‥、」

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健「いるけど」

極めてクールな表情で、

極めてクールな回答

『どんな人？』

健ちゃんは、ボトルを確認していた手を止めて、カウンターに凭れた。

健「俺が見てきた女の人の中で、一番綺麗。すぐピーピー泣きそうなやつなのに、実は芯通ってて弱音吐かねーの」

健「俺が、この手で幸せにしたいって思える人」

そう答えた健ちゃんの後ろ姿はかっこよかったけど、

どことなく寂しそうに見えた。

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