【文スト】太宰治の義理の姉【青の時代】 (ページ37)

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太宰、中也、十五歳３３ページ37

蘆花side

先｢怒りの為じゃ。無念への憤怒じゃ。奴は怒りを喰らう。奴は儂を地獄よ現世に呼び戻し、更なる怒りを生み出させる腹積もりよ。強大な力を持つ神の獣、黒き炎の《荒覇吐》

___奴はこの世界の怒りそのもの。奴の望み通り、儂はここで復讐を果たし、更なる怒りを振りまく。儂を殺した者よ

__今日より貴様は震えて眠れ｣

台本臭い…やけに芝居じみた台詞を先代が言い切ると、膨大な炎がその身体から噴出した。

札束が一瞬で燃え上がり、壁材が溶け、すぐに映像が黒く途切れた。監視装置が停止したのだろう。

画面が暗転しても、すぐには誰も声を出さなかった。

森｢以上が、監視記録に残されていた全内容だ｣

森さんはそう云って、映像端末の電源を切った。

森｢今のところこの映像を知るのは警備担当と私だけだ。口外を禁止するよう厳しく言い渡してある。
だが__それも無駄かもしれない。画面に映っていた先代が同じ演説を他の場所でぶち挙げない保証はどこにもないのだからね｣

治が硬い表情で森さんを見た。

治｢もし他の場所で演説したら？｣

森｢予想がつくだろう。この映像で彼は、自分の死因が病死ではなく暗殺だと云っているのだよ。もし同じ内容が先代派に知れたら

___最悪の予想では、組織内の三割が私の敵に回る。

勝っても負けても、マフィアは壊滅だ｣

少しだけ眉を顰め、画面を注視する治の頭を撫でる。

森｢中也君。君は最初に太宰君達と会った時、《荒覇吐》について質問したそうだね？

______荒覇吐とは何者だい｣

中原君は森さんをちらりと見て黙秘する。

森さんがこちらを見て催促するため小さく息をついてから口を開く

｢荒覇吐と云うのは？伝承上にある神の眷属。
曰(いわ)く、脛(はぎ)に佩(は)く脛巾(はばき)の神、日本神話以前の古き神。

ただ、あまりにも古いために、その正体は判然としない。本当はどんな字を書くのかも判らないそうね。故に土地によって勝手な伝承が付け加えられて、色々な"アラハバキ神"の類型(ヴァリエーション)が語られているとか。｣

中｢神なんてモノの存在を信じるのかよ｣

私の話した内容に中原君が莫迦にしたように云う。

森｢いいや。私は見たモノしか信じない。そして君も見た通り、先代の姿をした人物が映像に映っていたのは動かしようのない事実だ｣

森さんが首を振った。