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煌(5) ページ6

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初めてだった。試合中の観客席とコートの距離間以上に木兎先輩に近づくことは。
学校内で見かけることはあっても教室の場所が全く違うが故にすれ違うことも無いし、三年の教室がある階に赴いたのも今日が初めてだった。まさか、こんな風に会えるなんて。
三年一組ということで、木兎先輩が普段座ってる席はどこか探そう、くらい思っていた節はあるものの、時間は放課後で部活中だしその本人が見られるなんて都合のいいことはあるわけがないと思っていたのだ。


一人内心大嵐が巻き起こっている私を他所に淡々と委員会は始まり、誰も私の心臓が速さ音共に普段の倍になっている事など気づいていない。先生の話なんて、一つも頭に入ってこない。

初めての委員会は各クラスの役割分担を軽く決めるオリエンテーションのような内容で終了したものの、これはぼんやりしていた私への罰だろうか。


「じゃあ、これ。一年の分よろしくな」

「はぁーい……」


いつの間にか一年の責任者のような立ち位置に抜擢されていた私はなにやら書き込みが必要なプリントを先生に手渡され、尚且つ「書いたら職員室置いといてくれる?これから職員会議なんだ」と言い渡されまたしても「はぁーい…」と夢現に返事をした。


未来の私には申し訳ないけれど、今の私にはたったこの程度のことは造作もない弊害。先程数センチ先にあった木兎先輩の顔と私だけに向けられたあの声を思い浮かべれば、今ならここにある窓から虚空に一歩踏み出してもふわふわとずっと浮いていられそう。

そんなことを考えながら今日は解散になり、私はそのまま椅子に座り直して手渡されたそのプリントにシャーペンを滑らせる。

同じ作りだけどどこか違う場所のように感じる三年生の教室は落ち着かないけれど、誰も居ない上に木兎先輩がいつも見ている景色を堪能できるまたとない機会。どうせならギリギリまで居座ってやろうという下心満載でいつもより数倍丁寧な字でプリントを埋めていく。


…と、全員が部活に出払っていて静かだった廊下から不意にタッタッと軽快な足音が耳に入り込んでくる。
この教室の先輩だったらちょっとだけ気まずいなぁ、と頭に過ぎる。
そのまま通り過ぎてくれないかな、思っていた足音はお約束のようにピタリと止まり、同時にガタッと扉に手をかける音がする。



「……あれっ?なにしてんの?」



今日という日は、一体どうしてこんなにも奇跡が重なるのだろうか。

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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時

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