煌(36) ページ37
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週末に久しぶりの試合を控えた週の木曜日。
私は後ろ手でカラカラと生徒会室の扉を締めながら、扉前で待っていてくれた友人の元へゆっくり足を進める。
「先輩何だって?」
「……………、やっぱり、三年生が優先だ、って」
あちゃー…と天を仰ぐ友人を他所に、私は重たいため息を吐き出した。
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男バレのために結成される応援団の募集は三年生から順に枠が埋まっていく仕組みになっていた。
これまで運良く一年の自分たちまで頭数に入っていたけれど、今回は単に運が悪かったのだと思う。
『いつも来てくれるから…』と直々に私を呼んで今回は遠慮して欲しいと伝えてくれた生徒会の先輩は申し訳なさそうに眉尻を下げていた。
これに関しては先輩は何も悪くないし仕方ない。もちろん残念ではあるけれど、そういう決まりがあるのだからそれはそれだ。
…けれども。
「……どうすんの?木兎先輩。絶対納得しないよ」
「うわぁ…どうしよ…。私行く気満々だったから普通に行く体で話してたよ…」
私達の脳裏に過ぎるのは自分達の残念だという感情より先に木兎先輩を如何にして納得させるかという事だった。
あれだけの大人数での応援でも、その中で群を抜いて木兎先輩個人を応援している人が多くても、そこに私が居ないと知れば木兎先輩は確実に狼狽える。抜け殻になる所が容易に想像できる。
そんなことを真面目に思わせる程、近頃の木兎先輩のメンタルは私の存在で簡単に浮き沈みしていた。
……正直に今回は行けなくなったと話すか。でも試合目前のこんな時にまた木兎先輩の調子が悪くなったなんてことになれば私は腹を切るだけでは済まされない。
いっそ何も言わずに行かなければ___、
「それはダメだね。あの人多分…いや絶対気づくよ」
客席を人一倍気にする人だと指摘する友人にそれはその通りだとまた肩を通す。
それにもし居ないことに木兎先輩が気づけば後が怖い。命がいくつあっても足りない。
「ほんとにどうしよう……なんて言えば…」
「エースのお気に入りも楽じゃないねぇ」
頭を抱える私を横目に友人は含み笑いを滲ませる。
確かに手放しで喜べる事ばかりじゃないないなと絶体絶命の状況に陥って初めてそれに気がついた。
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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時