煌(33) ページ34
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私の言葉を噛み締めるように下唇をきゅっと引き結んで目を伏せる木兎先輩。
それから堪らず、といった様子でぱっとこちらを振り向く。
「…いーの?俺毎日待っててって言いたいんだけど…」
「言ってください!木兎先輩と最寄り同じだし、危ないことないし」
「あーダメダメ。家まで送ってくから」
「え、」
思ってもいなかった申し出に目がぱちくりと瞬く。「悪いです」と言えば「なにが?」と心底不思議そうな顔で首を傾げられ、えぇと…と頭を捻り木兎先輩を説得できるような最もらしい理由を模索する。
「んーと…逆方向だし」
「Aん家って××の近くなんでしょ?俺そこまでよく走りに行くんだよ」
「……練習で、疲れてるだろうし」
「っだからぁ!部活終わって家帰ってからもその辺まで行くの!逆もクソもねぇ!ってか俺疲れてねーし!まだヨユーだし!」
「えぇ、あ、…す、すみません…?」
頬を膨らませた不服顔で憤慨する木兎先輩に慌てて謝る。
ぷんすかと形のいい眉を釣り上げている木兎先輩は「つーかさ!」と勢いそのままに口を開く。
「Aは放課後俺と一緒にいたいって願い叶ったのに、Aが家帰るの見てから帰りたいって俺の願いは叶えてくんねーの!?ずりーじゃん!」
「え、うーん…?そうですね、…?」
それとこれとは話が別じゃないかと私は思うものの、木兎先輩がそう言うのなら別じゃないのだ。
木兎先輩に不満なことがあれば私は聞いてあげるべきだし、そうしてほしいと言われたのなら黙ってそうするのが得策だし寧ろそれが私の務めだったと腑に落ちる。
「…じゃあ、お言葉に甘えて。よろしくお願いします」
「うん!俺がいればAも怖いもんナシだろ?」
暗え場所も関係ねぇ!と得意げな木兎先輩に頷く。
家まで送るなんて突飛なことを言い出したのも私の帰路を心配しての事だったのかと少しだけ驚く。こういう所、この人は半ば無意識にやってのけるからずるい。
「木兎先輩がいれば、向かうところ敵無しですね」
「むか…?」
「何も怖くないし、何だって乗り越えられるってこと」
「何だって……ほぉー…」
顎に手をやって納得したように頷く木兎先輩。「Aは俺のおかげでムテキか…」と独り言のように呟いて、なんだか神妙な顔をしていた。
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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時