煌(30) ページ31
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「それで?結局会いに行くの?」
「だって仕方ないじゃん…赤葦先輩に頼まれたんだもん」
「良かったじゃん、正当な理由ができて」
次の試合まで耐えてみせる!と友人の前で息巻いていたのは一週間前。
残り一週間を残してリタイアしたのは私のせいじゃない。どちらかと言えば木兎先輩のせいだ。…せい?おかげ?もうわからない。
とにかく私は赤葦先輩に言われた通り、″それなりに動く″にまで落ち込んだ木兎先輩のメンタル回復をするために部活準備時間の体育館に赴いていた。
お昼に言われたのは『部員全員貴方のことは認知してるから、準備中にでも体育館に顔出してほしい』とのことだった。
二年の赤葦先輩が私を知っていたのは部活中の木兎先輩のせいで、私も会ったことの無いスタメン以外の部員さんが私を知っているのも部活中の木兎先輩のせいというわけだ。
あの人、他人相手にどれだけ私の話題を出しているのだろうか。
身震いするのは高揚感か恐れか、多分どっちもだろう。
小走りでたどり着いたのは″第一体育館″と銘打たれた男バレの練習スペース。開け放たれた扉の中は未だ静かで準備中なのだろうと悟る。
日頃応援しているチームの練習場所に足を運び、少々どころではない緊張が襲う中、意を決して扉の中を覗こうとそっと近寄る。…と。
「お?おぉ!?Aちゃんいんじゃん!」
「っ、ひぃ!っ、こ、木葉先輩、!」
背中にかけられた声にばっくんばっくんと暴れる心臓。
制服のリボンを握りしめ呼吸を整える私の顔を木葉先輩は楽しげに覗き込む。
「なになに木兎?も〜いつ来てくれんのかって待ってたんだよ〜!あいつずっっとジメジメしてるしさぁ…」
「すみません、遅くなりました…今日赤葦先輩に言われて、」
「え、わざわざ?まぁ木兎しょぼくれてっと一番迷惑すんのアイツだしな」
はは、と肩を竦めて私の前を横切る。そしてそのまま体育館に入った木葉先輩。
暫くして聞こえてくる「おい木兎!客!」「んぁ?誰だよー」なんて声。
かなり久しぶりの木兎先輩の生声に無条件に心臓は跳ねる。
ばたばたと足音が段々近づいてきて、俯く視界に写る白いバレーシューズ。
「ッッうお、!?Aっ?!!」
「お…お久しぶり、です」
形のいい眉を引きあげ黄金色の瞳を限界まで見開いて私を見た木兎先輩。
そして数秒の間の後、じわじわ弧を描きはじめる木兎先輩の口角。
しょんぼりと垂れていた髪が、ぴんと張ったように見えた。
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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時