煌(29) ページ30
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ぽかんとする私に一つ頷いた赤葦先輩は続ける。
「あの人最近なんか様子が変で。部活中もコートに入ればそれなりに動きはするんだけど、なんて声かけても常にしょぼくれてるからおかしいなと思ってさ…」
聞いたのだと言う。しゅんと覇気のない木兎先輩に、何かあったのかと。
「……そしたらあの人、″Aの顔が見たい″って言い出すから」
その瞬間、浮かんだ感情は″ご迷惑を…!″に尽きる。
私は全国に名が轟く大エースを″それなりに動く″適度のランクに格下げしてしまったのかと今すぐ頭を垂れたい心境だった。
青ざめる私に赤葦先輩は言う。
「別に避けられてるとかじゃないって言ってたから、会いに行ったらどうかって言ったのにさ…あの人妙なとこで意固地になる子供っぽいとこあるから」
「…わ、わかります」
「うちの問題なのに巻き込む形になって申し訳ないと思ってるんだけど…。貴方がいないと復活しないみたいだから、あの人。木兎さんを助けると思って、協力してもらえたらうれしい」
「巻き込むなんてそんな!こちらこそ私のせいでご迷惑おかけしてすみませんでした…っ!」
額が膝に着くほどの謝罪をすれば、頭上から聞こえた「いや、寧ろ感謝してるよ」の声。
「あの人のメンタルの波が激しいのは今に始まった事じゃないから俺らも慣れてるし気にしないで。今でこそあんな状態だけど、木兎さんが貴方の話をするようになってから調子良いときの調子が前よりかなり良くなった」
単純にモチベーションが前より上がったんだと思う、と。
何度も言われた「Aが応援してくれたら頑張れる」「元気出る」を思い出して気づく。
私は、木兎先輩のモチベーションになっていたのかと。
「あの…恐れ多い、ですけど。お力添えになっているなら幸い、です」
「うん。俺が言うのもおかしいけど、これからもあの人のこと見ていてあげてほしい」
「も…もちろんです!次の試合も楽しみにしてます!」
頑張ってください、と言えばありがとうと薄く口角を上げる赤葦先輩。
別れ際、「木兎さんのこと、よろしく」と念を押すようにそう言われ、嬉しいやらエースのモチベーション維持係の重圧やらで胸が詰まった。
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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時