煌（２０） ページ21
.
｢あんなの目の前で見せつけられちゃ、Aが気に入られてるんだなって思うしかないよね｣
｢…不服？｣
｢まさか。信じられないだけ。私あの時木兎先輩の友達と目合ったもん。何見せられてるんだろうね？って｣
何って、普通の会話。
と言おうとしたけれど明らかに普通ではないなと口を噤む。
けれど私の中でそれが普通寄りに偏ってしまう程、普段から木兎先輩はあんな感じだった。
他者に指摘されて初めて客観的に木兎先輩とのやり取りを省みたとき、ふと『私ってかなり木兎先輩に優待されていないか？』という大きすぎる現実がどさりとのしかかってくる。同時、どうしようも無い優越感と満悦感が押し寄せてまた胸がじんわりと痺れる。
きっと木兎先輩の性格的に誰にでも分け隔てなく心優しいのは言わずもがなだろうが、こんなふうな扱いを受けているのは紛れもなく私だけだ。
なんせこのテスト期間中の二週間、毎日一緒に帰っていた実績がある。他の人に尽くしている暇なんて無かっただろう。
｢はぁー………好きだ…｣
｢あのーそれはいいけど、今日木兎先輩遅くない？いつもならもうきてる時間だよね｣
｢ぇ、…あ、確かに｣
言われるがままふと時計を見ればいつも木兎先輩が迎えに来る時間を三十分程過ぎていた。
珍しい。昨日なにか言ってたっけ？と記憶の棚を呼び起こそうとしたところで、｢連絡来てないの？｣と友人からの指摘が入り、抜け落ちていたその可能性を見出して鞄から携帯を取り出す。
｢……あ、来てた｣
｢なんて？｣
｢″今日遅くなるからこっち来て″…ってやば！三十分前！｣
｢ほらぁ〜。早く行きなよ｣
連絡を三十分スルーしてしまった。大したことない内容ならまだしも、呼び出しの連絡だ。
三十分間やきもきしている木兎先輩の姿が目に浮かぶ。これは完全に拗ねている。まずい。
｢…はぁ、もう彼女じゃん。彼女でよくない？｣
｢っよ、良くない。いいって言われてない｣
｢なんなんだろうなあの人も〜…素直に付き合っちゃえばいいのに｣
遂に呆れ声で頬杖を付く友人の言葉には何も言わず、また明日、とだけ残して早足に教室を出た。
______″付き合っちゃえばいいのに。″
確かに、目を逸らしていたけれど距離感的に近しいのは先輩後輩というよりそっちだろうか。
だとしても私は木兎先輩が自覚して私を求めてくれるまで何も進展させる気は無い。
乙女心か意地か、ある種頑固な思いが近頃胸に芽生えている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです！楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました！！ (4月18日 9時) (
レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…！めちゃくちゃキュンとしました！！ (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました！全部最高で星10です！ (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして！何度も読み返して頂き光栄です…！完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです！コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして！糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました！ (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2021年7月10日 20時
