煌(18) ページ19
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私がことある事に感情が顔に出てしまうのは友人からもお墨付きだった。木兎先輩が絡むとそれが顕著だとも言われていた。
けれど異議申し立てしたいのは、木兎先輩だって顔や態度で感情を推し量れる分かりやすい人だということ。
元より喜怒哀楽の激しい人だとは思っていたけれど、近頃は中々それが度を越してきているような気がしないでもない。
「っ、ぼ、木兎先輩!どうしたんですか!?」
「……んぁ、A…どこ行ってたの?」
テスト期間も折り返しとなった今日。
木兎先輩が放課後一年一組に顔を出すことに驚く人はもうおらず、同級生の中で放課後の日常に組み込まれたようだった。
そしてまた今日の放課後、職員室で用事を済ませて教室へ戻ると、私の席に友人よりふた周りほど大きな木兎先輩が突っ伏していて目が丸くなる。
慌てて駆け寄ると、木兎先輩は机の横にかかっていた私の鞄をはい、と手渡し何事もなかったかのようにすっと立ち上がった。
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一見いつも通り並んで校舎を出て、隣を歩く木兎先輩をチラと見る。
「…木兎先輩、何かありました?」
「えっ…分かんの!?」
「いや、勘ですけど…」
清々しいほどあっさり認めた木兎先輩は大袈裟に仰け反ってこちらを見る。いつも勇ましくそり立っている髪が心做しかしゅんとへたれているようにも見え、益々何があったのだろうとその顔色を窺っていると。
「あのさぁ俺ね、明日でテスト終わりだと思ってたんだよ。でもホントは明後日までだって…」
「え?あ、そんなこと…?」
「くっそぉ〜!なんか今回数Bねえなぁって思ってたんだよ!すっげぇ裏切られた気分!」
一人憤慨する木兎先輩は私の「そんなこと?」という失言に気づいていないのか聞いていないのか、髪をくしゃくしゃとかき回して悔しさを顕にしている。
「…そんでさぁ、すぐAに報告しようと思って来たのにAいないし」
「あ、すみません…職員室行ってて、」
「ふぅーん…」
不満を尖らした唇に込めているらしい木兎先輩は私の言葉に納得いかない風に地面をねめつけている。
…と、そこで私は初めて木兎先輩の本当の不機嫌の理由に気づいた。
「あの、ごめんなさい…ちゃんと待ってなくて」
「………ん、次からLINEして」
いじけたような瞳がくるんとこちらへ向く。
可愛い人、と思わず頬が緩んだ。
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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時