煌(17) ページ18
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ごそごそとまさぐって探り当てたのはスマートフォン。
へー、木兎先輩の機種それなんだ…とちゃっかり頭にインプットさせることを忘れず、何を思い出したのかとその動向を目で追っていると。
「なー、LINE教えてよ」
「えっ私?」
「えぇ?なんだよ〜。Aに言ってるだろ!」
差し出された画面に写ったQRコードと木兎先輩の顔を目をぱちくりさせながら交互に眺め、おずおずと自身の携帯のカメラをそれにかざす。
…びっくりした。まさか、思い付きの矛先が私に向くとは思っていなかった。それも、こんなご褒美でしかない内容で。
ぽん、と切り替わった画面にうつる木兎先輩の名前と、友人さんたちと楽しげに写っているアイコン。
あぁ私、木兎光太郎とLINEを交換したんだ。あとでものすごい報復が来たりしないだろうか。
この幸せの対価を身が縮む思いで考えていれば、「なぁなぁこれ、」と再び差し出される木兎先輩の携帯。
「これ…A?」
「あ…はい。隣は友達です」
自分のアイコンが木兎先輩の携帯で詳細表示されている事実に急に羞恥と高揚が同時に来て体温が上昇する。今そんなアイコンにしてたっけ、もうちょっと写りがいいのにしておくべきだったと後悔先に立たずなことを考えていれば、ぽつりと独り言のように木兎先輩が呟く。
「へー…かわいいね」
「…っ……」
友達がですか?なんてベタな質問は野暮だろうか。……自惚れても、許されるのだろうか。
脳内では溢れんばかりに様々な思いが交差していたけれど、結局何も言えずに口を噤む。本当に独り言のつもりだったのだろうか、木兎先輩は特に私の反応を窺う様子もなく携帯の電源を落としてポケットに滑らせた。
「ほんとは最初に帰った日に明日も会うなら聞いとけばよかったー!って思ったんだけど、放課後Aのクラス行くのなんか楽しくてさぁ。聞くのやめたの」
「楽しい、ですか?階段わざわざ上るの大変なのに」
「え?二つ上るだけじゃん。それにさぁ、A。俺が呼ぶとすっげぇ嬉しそうな顔すんの、気づいてる?」
くしゃ、と無邪気な笑みとは別の意図を持って細められた目が私を捕える。
そんなに顔に出ていただろうかとするりと居心地悪く目を逸らせば「かわいーねぇ〜」とからかい混じり笑い混じりの声色で突っ込まれて緩む口角をぎゅっと両手で押えた。
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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時