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煌(14) ページ15

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人がまばらな玄関にいたまばらな人々の視線を一斉にかっさらいながら木兎先輩の隣を呼吸を浅くしながら歩き、ようやくの思いで校舎から出る。

この木兎先輩も今でこそ告白は断っているようだけど過去に付き合った人の四人や五人位は絶対居るはずで、私は今その選ばれし女性の皆さんに純度100%の賞賛の拍手を送りたい気分だった。


「どしたの?あんまそっち寄ったら危ねーよ?」


車道側を歩く木兎先輩の反対側、グレーチングで蓋されていない溝を指さして木兎先輩は言う。

すみません、と小さく呟いて3センチ程木兎先輩の方へ寄った。今後3センチが誤差だと発言した人に私は『木兎光太郎の隣を歩いてみろ!』と啖呵を切りたいと思う。


聞きたいことや言いたいことは五万とあった。
けれどどれもこれも″なんで″や″理由は″が語頭につく木兎先輩の頭を悩ませる言葉に違いなくて、それらは私の喉奥で渦巻いたまま遂に口から出ることは無かった。


「…わざわざ教室まで来てくれて、ありがとうございました」

「んふふ、ひっさびさに階段登った!でもさ、そういやクラス聞いてねぇ!ってちょっと焦っちゃった。その辺に居た子が言ってたけど、一組なんだな」


くるりと視線をこちらへ移し、俺といっしょ!と笑う。その顔にこっちまでつられて笑みが零れ、覚えやすくていいですね、と返した。


「そう言えば木兎先輩、私の名前覚えてくれたんですね?」

「へへ、すげーだろ!もう忘れない。…あ、そーだ。じゃあ新しいこと教えてよ」

「、新しいこと?」

「うん、Aのプロフィール。名前はAで、クラスは一組で、俺の事が一番好き」


あとは何がある?と大きい目で覗き込まれる。なんだろう、と特筆すべきプロフィールの無い私は頭を悩ませる。


「んーと…最寄り駅は、△△です」

「んぇ、まじで!?俺と一緒じゃん!うっそー!」

「えっ?ほんとですか!?」


今まで何度も利用していた駅で木兎先輩を見かけた日など一日も無く、にわかに信じ難い事実に目を丸くさせる。
驚く私にこくこくと何度も頷く木兎先輩はいつも何時頃の電車に乗っているかを話し、朝練時間や部活終わりの自主練が絡んだその時刻にそりゃ今まで時間が被らなかった訳だと悟る。

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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時

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