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煌(13) ページ14

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『用事は無いけど一緒に帰ろうって言いに来た』という木兎先輩の言葉は五秒かかって頭で理解出来たものの、意味が分からないことに変わりはない。
意味がわからないと言うよりは、その理由が分からないというか、わざわざ私と帰宅を共にしようと思った意図が分からないというか…と、私の頭の中も存外しっちゃかめっちゃかだ。


「…A?聞いてる?」

「きっ聞いて、ますけど。えっと、なんで…」

「えぇーなんで!?なんでってお前、ムズカシーこと言うなぁ!?用とかなんでとか……」


頭を使える範囲がキャパオーバーしたのか遂に頭を抱えて叫ぶ木兎先輩。余りの狼狽え方にこっちが気を使ってしまい、「すみません、なんでもないです」と慌てて取り繕ったものの納得できないことに変わりはない。

とりあえずこの場を動かすには木兎先輩の要求に従って私が教室に戻って荷物をまとめてさっさとここへ戻ってくることで、「少し待っててください」と伝えて教室へとかけ戻った。


放課後のプチハプニングの渦中にいた私の帰還に教室は興味津々ムードに包まれる。とりあえず一人残してきた友人の元へ行き、顔を上げた友人に震える声で告げる。


「……ぼ、木兎先輩が、一緒に帰ろうって、」

「……ねぇ、また私の知らないところで進展してたりしないよね?」


流石にそんなことになったら言う!と目に付く私物を乱雑に鞄にぶち込みながら友人に向け叫ぶ。「楽しんで〜」と菩薩顔を向けられぎゅっと鞄の持ち手を握り直して頷いた。

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「…っすみません、お待たせしました」


一瞬、普段自分が何気なく通っている廊下の壁に木兎先輩がもたれて立っている事実の信じられなさに胸が詰まったものの、頭を振って現実に返る。

ただ木兎先輩が無表情で突っ立っているだけでどうして私はこんなにもダメージを受けているのだろうか。戻ってきた私を見て「んじゃ帰ろっか」と無邪気に微笑む木兎先輩を見て今度こそ下を向いて顔を覆った。

この人とどうこうなりたいという気持ちに今も変わりはないけれど、それには相応の覚悟とそれに見合った鋼の心臓が必要だと今実感した。

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みんみん(プロフ) - ゆららさんのお話、とても大好きです!楽しくってキュンとしながら読ませて頂きました!! (4月18日 9時) (レス) @page47 id: 708a20f575 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 木兎さん最強でした……普段コメントしませんが、思わず感想をお伝えしたくなりました…!めちゃくちゃキュンとしました!! (2022年7月22日 2時) (レス) @page47 id: 448a7aaf1d (このIDを非表示/違反報告)
rry - ハイキューをテーマにした3作品読ませていただきました!全部最高で星10です! (2021年11月14日 22時) (レス) id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 天羽さん» 天羽様初めまして!何度も読み返して頂き光栄です…!完結までもう暫くお付き合い頂ければ幸いです!コメントありがとうございました( ´ ` *) (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 紅月。さん» 紅月様はじめまして!糖分増し増しで頑張っていきますのでこれからもご贔屓にお願いします( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2021年8月17日 12時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらら | 作成日時:2021年7月10日 20時

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