大正浪漫に咲く恋 〈雪〉

■帰りたい… ページ3

タツが出て行った襖を見つめる


「大正...」




私が昔に戻りたいって言ったからなのかな...

いやでもまさかね。言っただけで昔に来るなんてないし...






「にしてもここ何処なの...」



？「診療所」



「...え」



独り言を呟いたつもりだったのに答えが返ってきた
...いや、次は誰だよ。




？「お前、Aって言うんだってな」



「まあ、はい...」



？「俺、渡辺ショウ。よろしく」



「よろしく...」



渡「お前どこから来た？」



「目が覚めたらここにいました」


うん...間違ってはいない。

だって本当に目が覚めたらここにいたんだし。




渡「お前頭打ってる？」



「どうなんでしょうか...」



渡「いや、俺はお前に質問してんの。答えろよ」



「私だって分かんないんですから...」


なんで、ここにいるのかも。
大正時代にいるのかも、何もかも分からない。







深「診療所の前でAが倒れてたんだよ」



渡「ふうん...もしかしてお前、ワケありか？」



「ワケありって言えば訳ありかもしれないです...」



深「元気になったらちゃんと家に帰れよ」

そうだよ、私帰らないとだよ。

っていうか...



「私、ここに家ないじゃん」



渡「は？お前どうやって育ってきたんだよ？」


まあ、約100年後から来ましたなんて
言っても信じてくれるわけないよね...
余計変人扱いされるだろうし。

いや...言うしかないのか。





「私は、100年後で生きてるから...そこで育ってきた」



渡「はあ？こいつ本当に頭大丈夫か？」



深「検査した方がいいかも...父さん呼んでくる」


あれ、事が大きくなってるんだけど。
しかも検査した方がいいって...




「大丈夫だよ」



深「絶対大丈夫じゃないから言ってんの」





.




その後、宣言通り検査までされて。

もちろん何にもなかったけど。



「とりあえず、普通に過ごしたい...」








深「亮平呼んできた方がいいか...」



渡「俺、呼んでくる
あ、ついでに涼呼んでくるな」



深「なんで涼まで呼んでくるんだよ
家の手伝いあるんじゃねえの」



渡「ま、大丈夫だろ！行ってくるわ！」








「令和の時代に帰りたいよ...」



深「レイワ？なんだそれ」





すると突然、ズキズキと頭が痛くなってきた


深「A！？大丈夫か！？」



意識が無くなる前、
最後に見えたのはタツの焦った顔だった。

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