６：３２の君。【花巻貴大】

２５評価達成記念番外編！　松川一静 ※見る人によっては不快になるかもです。 ページ17

「一静！」


家の前で待っていればいつもと反対の方向から聞こえる可愛いAの声。

俺が振り返るより先に背中に感じる暖かさ。



「これはこれは浮気者のAさんじゃないですか。」

「そちらこそ浮気者の一静さんじゃぁないですかぁ。」



そう、俺たちは純粋なカレカノなんかじゃない。お互いに彼氏彼女がいる。

つまりお互いが浮気相手ということになる。

でも俺もAもお互いの彼氏彼女への想いは全くない。

Aなんて彼氏の名前をフルネームで言えないらしい。

なら別れればいいとこれを聞いたやつは思うだろう。

でもこの関係の方が色々興奮すんだろ？

Aは半年記念を祝わずに、俺は彼女との約束をドタキャンして。

いつバレるかわからない。

こんなにも興奮するコトがあるのか。

俺はこれ以上興奮するコトを知らない。

それ以前に俺はAの性格が好きだ。

だったら最初からAと付き合えば良かったんじゃないかと考えた時期もあった。

だけどこの関係じゃなかったら俺はAの本来の姿を知らなかったのかも知れない。

だから俺達はこの関係でいいと俺は思ってる。

勿論Aがどう思ってるかは知らないが。









「ねぇ。一静、早く部屋入れて。喉乾いた。」

「ハイハイ。仰せのままにオヒメサマ？」

「フフッ早くして頂戴？」





俺のお巫山戯にもノリノリで付き合ってくれる。これがアイツだったらこうはならない。

ただ赤面するだけだ。本当につまらない女だと思う。

Aと彼女を比べるのは良くないと分かっていても比べてしまう。









「あ、そーだ、一静！今日ご両親は？」

「適当な理由つけといたから明日の昼頃まで帰って来ない。」

「なんですか？一静くん。ヤル気満々ですか？」

「そういうAこそヤル気満々何だろ？ご丁寧に変えの下着まで持ってきて。」

「あぁー！バッグ見たな！…まぁ別に良いけど。あ、そうだ。いつも通り服貸して。Tシャツで良いから。」

「おーう。」


テキトーに返事をしてA用のいちごミルクを用意する。


「ありゃとー！」


受け取ろうとするAの手からいちごミルクの入ったコップを離す。


「一静？」


不思議そうな顔をするA。



「飲ませてやるよ。」


Aの表情を見る限りきっと俺は物凄く意地悪な顔をしているんだろう。



「ほら、飲まないの？」

「…早くして。」

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