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03 T.M side ページ3





「、、お気に召すもの、無かったですか?」

「ぇっ、、!いやっ、えっと、、」

不意に話しかけられ
パッと顔を上げるといつのまにかそばまで来ていた彼女が
眉毛を下げて俺の顔を心配そうに下から覗き込んでいた

いつもより少し近いその距離にドキッとして
思わず半歩後退りした俺


「ため息、ついてたので、、」

言われて初めて、今自分が大きくため息をついていた事を知った

「ぁっごめんなさいっ、、ちょっと、考え事してて、、」

店内の商品の事なんて
これっぽっちも見ていなかった、なんて
そんなの言えるはずもなく

慌てて顔の前で手を振り、言葉を紡いだ

「お仕事忙しいんですか?」


彼女はもちろん、俺の仕事の事も
俺が誰なのかも知ってくれていて

店内にお客さんがいない時にしか店に入らない俺に気遣い
いつも俺が買い物を済ませるまで
店の看板をcloseにしてくれる

それを彼女は敢えて俺には言わない
その優しさや気遣いが堪らなくて
少し期待する


どうしよう、、
聞いてみる?

いや、、彼氏の事じゃなくって

連絡先、とか、、
なんか、衣装の事とか相談したいとかなんとか何かにかこつけて、、
公私混同な気もするけど


「増田さん?」

未だ何気に距離の近い彼女がまた俺を呼ぶ

「あのっ、、」



カランカラン、、、

俺が今まさに一歩を踏み出そうとした瞬間
closeにしてあったはずの扉が音を立てて開いた

「あら、先客?って、、まっすーじゃん!」

何の断りもなく、俺と彼女だけのその空間に足を踏み入れたそいつ

親しげに俺の名前を呼んだその人物を見て
意味を上手く理解できず
思わず怪訝な顔をしてしまった



「えっ、、シゲ、、?」

そう、彼は、紛れもなく良く知るメンバーのシゲ

あまり買い物に出かけないシゲが何故
隠れ家のような造りのこの店に
当たり前みたいに登場したのか

何の遠慮も感じさせない入店の仕方に
まるで自分の方が場違いだと言われているみたいで少しイラッとする

「A、この前言ってたドーナツ。スタッフさんからの差し入れでちょうど貰ってさ、持ってきたから後で食べてよ」

「わ!ありがと!!さすが!!」

え?ドーナツ?
前言ってた?なに?
俺の知らない彼女の名前を口にして
俺の知らない2人だけの会話をする


あからさまに
出来上がっている2人の雰囲気に戸惑い
ただ黙ってそれを見ている事しかできなくて


さっきまで浮き足立っていた自分が嘘みたいに

一気に心の内がざわつき始めた




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めい(プロフ) - カレンさん» 更新遅くてすみません、、応援ありがとうございます(^^) (2018年11月29日 7時) (レス) id: 0660b4dc66 (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - 応援してます! (2018年11月28日 11時) (レス) id: c181c25be4 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - 祐雨貴さん» わーっ!ありがとうございますっ!!頑張りますので、どうぞよろしくお願いします(^^)!! (2018年11月28日 9時) (レス) id: 0660b4dc66 (このIDを非表示/違反報告)
祐雨貴(プロフ) - めいさんの作品、大好きです!新作が出るとわくわくします(笑)これからも頑張ってください(´` (2018年11月25日 12時) (レス) id: 7b949b540b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:めい | 作成日時:2018年11月25日 10時

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