いないと知っても (ページ4)

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Ⅲ ページ4

そんな彼女の唯一の楽しみは音楽を聴くことだった。

クラッシック音楽、ポップス、吹奏楽・・・。

何でも、聞いていた。

音楽を聴いている時、彼女は笑顔だった。

俺は、そんな彼女の笑顔に恋をした。

その笑顔を守りたいと思った。

だから、彼女に音楽を聞かせてあげたかったんだ。

だから、トランペットを始めた。

センスがあったらしく、メキメキと上手くなった。

中学生になった。

俺は、彼女に音楽を届けたかったから吹奏楽部に入った。

そこは、なかなかの強豪校だった。

練習もきつかった。

辞めようと思ったこともあった。

だけど、美玖の顔を思い出して、努力した。

コンクールメンバーにも選ばれた。

３年の時には、部長にもなった。

その年、俺達の部活は全国まで行った。金賞も取った。

ただ、順調な俺とは違って、彼女は日に日に弱っていった。

３年の冬、学校に来るのさえ困難になった。

俺は、毎日のように彼女の家に通った。