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勢いよく踏み込み、「らあぁ!!」とボールをフェンスに向かって投げた。
視界の隅っこで「あだっ」と転んだ沢村くんが見えたけれど、私はそのままボールの行方を見守った。
あ…もしかして、フェンスに届くんじゃ…?
「いけぇ〜〜!!」
『(…あれ、)』
このままフェンスへ向かっていたボールが右に傾いてしまった。
「えっ…?あれ?ちょ……」
……ボールは見事に、曲がってしまった。
「あああ〜〜〜!!何故曲がる〜!?」
ボールはフェンス手前でドンッ…と落ち、トーンコロコロ…コロッと、転がっていった。
…そうだ、沢村くんって無意識に変化球を投げちゃうような子だった…!
その事実を思い出していると、周りは遠投でカーブを投げた沢村くんを笑い始めた。
笑いの雨が降る中、監督が静かにこう告げた。
「答えは出たようだな。約束通り…投手は諦めてもらうぞ」
「ちょっと待って、今のは…」
「練習には参加させん!暇なら走ってろ!」
「え〜〜っ!」
…こればかりは、仕方がない。
エースになりたい、四番を打ちたい、レギュラーになって試合に出たい……。そんなことは、ここに来た人達なら、誰だって思っている。
でも、現実はたった9つしかないポジションを、100人近くいる部員同士で奪い合わなくちゃいけない…。
結果を残した者だけが生き残り、他の者は次のチャンスを待つしかない。
不安なのは、「誰か1人」ではない。
私は昔、その当たり前を理解していなかったから…独りで突っ走って、失敗した。
私は暗い雰囲気を纏って項垂れる沢村くんに近づいた。
『さ、沢村くん…?あの、擦りむいちゃったところ…手当て、しに行こ…?』
「はぃ………」
非常に落ち込んでいる沢村くんは気の毒だけど…練習に参加出来なくなった以上、エース…どころか、投手は諦めるしかないと思う…。
中には、ケガや故障で野球ができない人や、投手になりたくても、なれなくて他のポジションを目指してる人なんて、沢山いるんだから…。
でも、
『(こんな状況を、変えてくれるって…信じてるからね、沢村くん…)』
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空にはもうちらほらと星が見えてきた頃。
「A、今日も様子見に行くの?」
『あ、はい…。一応…』
制服に着替え終わり、もう帰るだけという貴子先輩にそう聞かれた。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (4月7日 2時) (レス) @page45 id: e83d5f7d48 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんころぴー - さくらなぎ。さん、コメントありがとうございます!お褒めいただき、とても嬉しいです( ˶ˆ꒳ˆ˵ )続きが早く更新できるように私も頑張ります! (2022年3月28日 12時) (レス) @page9 id: 8c6f4cd173 (このIDを非表示/違反報告)
さくらなぎ。(プロフ) - 見ていてとても面白いなと感じました、続きが更新されるのを楽しみに待っています!!!! (2022年3月27日 20時) (レス) id: 2b648593bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんころぴー | 作成日時:2022年3月27日 18時