序章 【招かれざる客】 ページ8
「潜入となると、己の尾も隠さねばならぬ。神経を使うものだな」
男は祠の前に立ち、祠の周りに掛けてあったグルグル巻きの結界を素手で簡単に引きちぎった。しかし、祠の扉に封をしてある最後の札に触れると、札がそれを阻むように拒絶を示して火花が散る。
「チッ。下等生物如きの小細工が通用すると思うなよ……!」
目を銀色に光らせ、両手で祠の扉をこじ開けようとしがみつく。バチバチと結界札の拒絶反応が男を襲うが、けたたましい竜の咆哮と共に男が祠の扉を開けてしまった。
「そ、んな……!?花坂の結界だぞ……!?」
「この程度、竜の手に掛かれば造作もない事だ。
夢の珠は頂いた。返してほしくば『迷いの森林』を突き抜け、『神竜教会』まで来い。我々が手厚くもてなしてやろう」
桃色に輝く手のひらサイズの珠を持ち、男はそう言うと一瞬にして消えてしまった。
腹の痛みを我慢しつつ、池から這い出て夢乃の方に向かう。夢乃は咳き込みながらも何とか立ち上がっている状況だった。
「夢乃、大丈夫か?」
「平気よ。でも明日は打撲コースね。そういうあんたは?」
「滅茶苦茶に痛い」
「ま、そうよね。アレを食らったんだし。同じ威力を味わっておいて何だけれど、びっくりするほど強いわよあのトカゲ」
「多分トカゲじゃない。
というか、何なんだアイツ。竜がどうとか言ってたが……」
「知らないの?あのトカゲ尾っぽ、『竜人族』よ」
【『竜人族(りゅうじんぞく)』
魔物・悪魔などが存在すると言われる世界『魔界』に生息する希少種。一説では、元はドラゴンであったが勝手が悪いので、人間の姿を模倣して進化した種族ではないかとされている。
希少種とされている理由は、殆どの竜人族が戦闘能力に長けており、好戦的なために戦士や傭兵稼業をするものが多く、それ故に死亡しやすいというのがある。
身体能力は殆どの種族よりも遥かに上位になり回復能力も著しいが、死ぬときは死ぬ。また、生殖活動が遅く子孫を残しづらいのも希少である理由とされる。
(理想年紀 第二巻 三章
「種族の定義」より引用) 】
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時