理想怪奇「死竜魔」 (ページ7)

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序章　【招かれざる客】ページ7

ぶわりと、突風に近い強風が落ち葉をさらう。せっかくの努力の結晶が台無しになり、思わず声を上げた。しかし運悪く目にゴミが入ってしまい、目を瞑ってしまった。めちゃくちゃに痛い。やっと取れれば、ゆっくりと目を開ける。

「いったぁ……何なんだよ急に───」

　殺気を背後から感じ取る。

　振り向きざまに魔剣に手を出した時にはすでに遅く、俺の腹に拳がめり込むかと言わんばかりに入ってきた。人間とは思えないその威力に俺の体は吹き飛ばされ、裏庭にある浅い池の中に落ちていった。水しぶきが上がる。

「月城！」

　緑髪をなびかせるその男は、夢乃を無視して祠へ近づく。祠の中身が目的だと察した夢乃は、ポシェットの中にある植物の種を取り出した。種を相手の地面に投げつけると、種は自ら土の中に入っていき、巨大な豆の木となって男の足を掴んだ。

「あんた、何をするつもりかは知らないけれど花坂の領地に入ってきて挨拶もなしに窃盗するなら、相応の対処をさせて貰うわよ。」
「……花坂？
　……あぁ、理想の都における人間の守護者だったか。華道家と聞いたが、このような珍妙な技を使ってくるとは」

　悠長に話す男が、その右足を掴んでいる豆の木の枝をいとも容易く引きちぎってみせた。直径10cmもあるであろう豆の木の枝を右足一つで引きちぎるのを見、夢乃は驚きの表情を見せる。
　男の瞳が黄金の色から銀色に輝く。

【『能力(のうりょく)』
　特に力の強いものには、理想創造七賢主の1人『瀬戸すみれ』から一つ能力を授かる。それは突然であり勝手な事なので、いつ自覚するかは分からない。
　自由に能力を行使できると、瞳の色が変わる特性がある。
　 (理想年紀第一巻番外
　「理想の都のすゝめ」より引用) 】

「夢乃、能力が来るぞ！」
「なん──、っ！？」

　息も絶え絶えで、なんとか夢乃に伝えようとしたが相手の方が早かった。瞬きしている間に男は夢乃の目の前までやって来ており、右足で夢乃を蹴り飛ばす。祠とは反対方向の木にぶちあたり、夢乃は背中を打って地面に倒れ込む。

「夢乃！？」
「花坂の一族といえど、所詮は人間か」

　きちっと着こなしている燕尾服からモゾモゾと何か蠢いていると思えば、ずるりとトカゲの尻尾のようなものが出てきた。